『ぶくぶく堂』からの奉納品

 20分もすればご満悦のようす。機会があればまた連れてきてあげよう。そんなことを思ってたら、話しかけてくる2人組がいる。


「マスターお兄ちゃん! こんにちは」

「あら、今日は1人なの?」


『ぶくぶく堂』のきよこちゃんとさちこさん。ここ数日は常に巫女達と歩いていたし、今は光龍様が一緒だから自分には違和感がなかったけど、側から見れば俺は1人。さちこさんに指摘されて、やっと気付く。今日、俺は久し振りに1人ボッチで歩いている。


「いいえ、光龍様と一緒なんです」


 以前は1人ボッチが普通だった俺だけど、さちこさんに1人ボッチを指摘されて、咄嗟に見栄を張って、光龍様のことを話す。さちこさんは苦笑い。俺が宮司でなければ変な人と思われたかもしれない。


「それは気付かなかったわ。御奉納の品、持って行ってちょうだい!」


 そう言ってさちこさんは俺にたい焼きを9つ持たせてくれる。俺の分と巫女7人の分と、光龍様の分。


ーーー


(2つ足りないのじゃ。儂の分は3ついるのじゃ)


光龍様の声が聞こえたけど、俺は完全に無視して、さちこさんにお礼を言う。その翌日から、さちこさんは毎日、光龍大社に来てたい焼きを9つ供えてくれるようになる。

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