第八話:マイターン-ユーウェイン参戦-

 ゴールデンウィークも終盤に差し掛かっている頃、レッドダイバーのニュースが飛び込んできた。


 何と、このタイミングで特撮版とのコラボを発表したゲームがあるという物である。明らかに便乗商法の気配もするが、何処の作品なのか――。


【どういう事だ?】


【今までなかったのが不思議な位だが――】


【時期が時期だけに、これは明らかにタイミングが悪いぞ】


【レッドダイバー自体、アニメ版とコラボした作品はある。特撮版も過去の作品ならばあった様な気がするが】


【これはタイミングだ】


 SNS上でも、こうした賛否両論といった意見が出ている。こうしたまとめサイトを見て、炎上させようという勢力も動いているのだが――フラッシュモブ以下の勢力は、ガーディアンに一掃されるのがオチだった。


 SNS炎上自体、特定コンテンツで炎上させ、ライバルつぶしみたいな手段で使われていた事もあり、諸外国ではSNS炎上が脅威として認識されるレベルにもなっているのだが――真相は定かではない。


「まさか、こう言う手段に出るとは」


 まとめサイトを見て若干呆れていたのは、真田さなだシオンである。彼女もさすがに今回のコラボは便乗商法ではないと言われても、半信半疑なのは言うまでもないだろう。


 明らかにレッドダイバーの現れた一件を踏まえている、と言っている様な物だが、それを誰も言及する気配はなかった。


 誰かが言及しても、パリピ勢力等のSNS炎上目的と認識される可能性が高いのだろうか?


「まさか、こう言う手段に出るしかないとは」


 コンビニの外でタブレット端末を片手にまとめサイトを見ているのは、眼帯を付けているヤルダバオトだ。


 何故、彼が外に出ているのか? 現在は新作の開発やロケテスト等で忙しいような時期である可能性も高いというのに。


(確かにレッドダイバーの一件は機密事項であるとも伝達し、その上で周囲に察知――)


 ヤルダバオトは、ふと伝達した言葉を思い出した。機密事項である事、それ以外にも別のメッセージも伝える。


 そのメッセージとは、レッドダイバーの件を他のSNS炎上勢力等に利用されないようにする事だった。


(そう言えば、そうだったか。確かに伝えていたな――)


 しかし、ここまでやれとは言っていない気配もするが、レッドダイバーのスーツも特撮版をベースにARゲーム用のカスタマイズが加えられている。


 この外見でも公式コラボなのだが、出没しているレッドダイバーとは若干のデザインが異なっていた。そして、このデザインこそ――少し前にSNS上で拡散していたレッドダイバーでもあったのである。


 

 リズムゲームプラスパルクールを炎上させて得をするのは何処なのか? それを考えてガーディアンが行動しているとは考えにくい。


 彼らは単純にSNSを炎上させる勢力を摘発しているにすぎないのだ。個別タイトルの炎上だけで動く訳ではなく、複数の炎上があって初めて動く。


 そういった行動方針に対し、それでは遅いと言わんばかりに動き出したのがゲーマー同盟である。現状で、SNSで目を付けられていないのは彼ら位か。


 個別で動いている人物も当然いるのだが、レッドダイバーのように目立ってしまうと逆に炎上のターゲットになりかねない――という事で名前を出さない事が多い。


 匿名で悪質な炎上勢力を狩っている彼らの行動は、どちらにしても炎上勢力と変わりがないと思うのは気のせいだろうか?



 まとめサイトとは別に、あるサイトの小説をチェックして何かを感じていたのは暮無くれないヒビキである。


 彼は漫画喫茶ではなく、草加駅近くのアンテナショップでサイトを閲覧していたのだが――そこである物を発見し、現在に至っていた。


 カウンタータイプのテーブル席に座り、タブレット端末を片手にサイトを検索している。目の前はガラス張りに見えるが、外の風景は全く見えない。


(彼らは何を目的で動いているのか?)


 さすがに漫画喫茶では赤いコートを着ているものの、フードに関しては被っていない。むしろ、不審者扱いとして見られるのを防ぐ為だろう。


 なお、ARメットに関しては被っている人物も彼の周囲にいるのだが、こちらは問題視されていないのが現状か?


(自分はガーディアンの行動に同調するつもりはないのに、向こうから便乗しているのか)


 チェックしている小説には、ガーディアンが他の勢力に所属する主人公と対立する様なシーン等も書かれている。


 WEB小説である以上はフィクションなのだが、どうしてもヒビキにはフィクション前提で書かれたような作品とは思えない。


 明らかに、この作品はレッドダイバーの二次創作ではないのだが、レッドダイバーと同じようにSNS炎上を警告している可能性は高いだろう。


(まさか? ガーディアンの行動方針とは――)


 ヒビキはガーディアンが何を目的に動いているのか察し始めた――次の瞬間に何者かの気配を感じる。


 目の前のガラス張りの壁に映り込んだので、気配と言っても丸見えかもしれないが。


(彼は一体、何者なの――)


 SFに出てくるようなぴっちりなスーツを着用し、赤髪のロングヘア、それにブルーライト対策をしたカスタマイズゴーグル。


 その外見を見て、映り込んでいるのはユーウェインだとヒビキは把握した。ゲーマー同盟の話自体は情報が別のサイト経由で拡散している為、ヒビキには分かっている。


 ユーウェインはヒビキの姿を見て、誰なのか把握するのに時間がかかっている一方で、ヒビキは即決で分かったのは――。

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