山田くん一大事
古新野 ま~ち
第1話
山田肇は片手にスマートフォンを握り、そこに恋人の冬木鈴音の下腹部より下が露になった画像を開いていた。当然、彼はパンツを膝あたりまでずらし、頭のすぐ近くにティッシュ箱を用意していた。
あともう一息というところで、股のなかに自らの匂いの強い肉棒を押し込むことができると思ったものの、ただいまという静氏の声が響いた。予定よりも早く帰宅したとのことで、手筈が狂ってしまった。お詫びにと、その夜に送られた画像がこれである。
彼は自分の年齢などを考慮すると、一時の囃し立てられる俗情と結託することにメリットがないと判断し、甘んじて画像を拡大して中心部に口内と似た薄い肉の色を眺め、もう片手は鼠径部を爪でなぞり睾丸のふぐりを揺らし陰茎を強く握りしめた。亀頭を覆う包皮が段差になっている亀頭冠に触れると血流の感覚が顕在化し脈拍が大胆になる瞬間に鈴音の顔をうつした。勢いあまって、彼のペニスが抜け落ちてしまった。手の中に握っているそれは、先端から薄い黄色の粘液を吐き出している。自らのそれを目の前に持ってくるのは異様な体験であった。つまみ上げて振ると家庭用ゲーム機のコントローラーのような振動とともに釣られたばかりの鯵を思わせる力強さで、弾けるように逃げだした。
自分のペニスを追うことになるとは思ってもおらず、まして公道にでたとき、意思をもった肉の塊がたらこスパゲティのCMみたく跳躍につぐ跳躍をしているものだから、道行く善男善女は慌てふためく。肇は自分のペニスが踏まれたり自転車などに轢き潰されないかと危惧しながら、パンツとTシャツだけで追いかけていた。
さて彼のペニスが急いで向かうのは見覚えのある方であった。この道を進めば恋人の住むマンションが見えてくる。
まさか、鈴音を襲うつもりではないかと血の気が引くおもいである。それだけは、何としても避けねばならぬ。優しい自分の恋人が、正体不明のペニスに傷つけられることなどあってはならない。
時刻は夕飯どきであるから、自然と帰宅しているサラリーマンの姿が目につく。その中に一人、静氏、つまり鈴音の父親の姿があった。
「あれ、山田くんじゃないか! なんだその姿は」
彼の声に耳を傾けている暇などなかった。恋人の危機なのであるから、自分がはしたない姿で衆目にさらされることなど、些細なことである。
ところが、その声に過敏に反応したのは、紛れもなく山田肇のペニスである。彼自信も見たことないほど膨れ上がり、人の顔の大きさくらいまで伸び上がると、静氏に駆け寄るのだ。先端からは透明で粘着性のある体液を吹き出して空気の通り抜ける音がまるで鳥が餌をもらうために囀ずるようである。
静氏は、そのようなペニスを手に取った。彼の顔に白濁の粘液を吹き掛け、唇にタックルをしかけている。
そして背中の方から尻に向けてはいより、スラックスごしに肛門をめがけて吸い込まれるように侵入してしまった。
肇はペニスが前代未聞の暴行をはたらいたことに、そしてその惨状に全く理解が及ばない。
「あの、えっと、その。申し訳ありません」
「もう……肇さんのエッチ」
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