第27話~犠牲と共に~

東京の南にある無人島の近くで船が波に揺られていた。


船には橋本と拘束された立花と1人の少女が乗っていた。


「それで立花さん箱は何処にあるのかな?」


橋本がそう言うと立花が


「この海の下辺りにあるはず」


「では、後はこちらで探しますから」


橋本はそう言うと少女に指示を出した。


少女は無言で潜水具も無しに飛び降り海面にゆっくりと降り立った。


少女がしゃがみ両手を海面に着けると少女の周りの海面が平らになった。


少女は少しずつ移動しながら同じ事を繰り返した。


「アリス、どうだ、ありそうか」


アリスと言われた少女は横に首を振り答えた。


「本当にここで間違い無いのかな立花さん」


「確かにここに沈めた」


そう立花が答えると橋本が


「止むを得ない、アリス潜水しろ」


そう指示されたアリスは片手を前に出して魔法を唱えた。


するとアリスを囲む様に1つの泡が形成され海に沈み始めた。


その泡が十数回浮き沈みを繰り返す、船もそれに合わせて移動した。


島の近くまで来たときにアリスが箱を抱えて上がってきてそのまま島に上陸した。


橋本は船を島に着け上陸をしてアリスに近づきながら。


「アリスよくやった、箱をこちらに」


アリスが橋本に箱を渡そうとした時に聞いた事のある声がした。


「そこまでよ橋本」


橋本は声のした方を見て驚いた。


そこには来れるはずのない2人が立っていた。


「何故お前たちがここに」


いつも冷静な橋本も思わず叫んでいた。


「女の感かな」


美由紀は意地悪そうに言った。


橋本はアリスから箱を強引に奪うと。


「アリス、あいつらを殺せ」


そう言われたアリスは1度頷き戦闘態勢に入った。


それを見た美由紀と法亢も同時に戦闘態勢に入った。



SAS支部で岸田が作った水鏡で一部始終が映しだされていた。


「アリスじゃないか!」


同時に言ったのは長谷川と岸田だった。


「やはりWDは落ちていたのか」


長谷川がそう言うと続けて


「とめさん、西谷にアリスは召喚魔法とダブルキャストに注意しろと」



岸田からルナ通信で連絡を受けた2人の前に海が吸い上がると2体の水龍が現れた。


2体の水龍は水のブレス同時に吐き、それと同時にアリスから複数の水の矢が放たれた、美由紀は魔具と魔法で防いだが、法亢は防ぎきれず攻撃を受けてしまう。


それを見ていた橋本は船に乗り込むと


「最後まで見ていたいが、これを持ち帰らないといけないので」


そう言うと船のエンジンを全開にして逃げ様とするが船が真っ直ぐに走らなかった。


船は円を描きながら島に乗り上げてしまい横転してしまった。


その衝撃で橋本と立花は船の外に放り出されてしまう。


「残念だったな橋本、俺は情報系で船を操るくらい簡単なんだよ」


そう言ったのは立花だった、そして近くに転がった箱を力一杯蹴飛ばした。


宙を舞った箱は法亢の前に落ちて蓋が開いた。


箱の中には菱形の蒼い宝石が付いたイヤリングが入っていた。


「私のルナはリドイ、UDSの手に渡るくらいならSASのSKのお前が使ってくれ」


「その魔具はルナと同期して魔法の威力とキャスト数を上げてくれる」


「それと元妻の事を頼まれてくれてもいいか」


リドイと名乗ったルナは法亢にルナ間通信をし、それに法亢はわかったと答えた。


法亢がイヤリングに手を伸ばすとそれに答えるかの様にスッと消え法亢の耳に装着される。


「た、ち、ば、な、お前は」


橋本は立ち上がりながら唸るように言うと、次の瞬間に立花は拘束されたまま体を震わせて悲鳴を上げて動かなくなってしまった。


「まったく使えないやつばかりだね、魔具は奪われ、私のおもちゃのアリスの方がよっぽど使えるじゃないか」


橋本の横にスッと現れた柳が言った、現れた柳を見て橋本は腰を抜かした様に座り込んだ。


「その魔具はお前たちに貸しておくよ、いずれ返してもらうけど」


そう柳は言うと西谷と法亢の前に爆炎魔法を放ち3人共消えていなくなってしまった。

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