第5部 理想郷の誕生日《4》
「ちぇんたっき!」
ダンジョンマスターが、ポンっと出してくれた二槽式洗濯機! 私はその洗濯機の前で、ぴょんぴょん跳びながら洗濯機を見上げます。
すると、一緒にダンジョンに来ていたお姉さんが抱き上げてくれた! ありあとー♪私は手を伸ばして、洗濯機の中を確認しましたとも!
「う?」
洗濯層の蓋を開けてみる……かわりなし。脱水層の蓋を開けてみる……かわりなし。タイマーとかも……かわりなし。
???と、首を傾けたままでいると
「グルナ、ここだ」
と、ダンジョンマスターが二槽式洗濯機の下の方を指差しました。
お姉さんと顔を見合せ、おろしてもらい覗いて見ると、“!” 電源コードがあるだろ所にマッチ箱の高さを少し高くして、二つ並べた箱のような物がくっついています。
「こーど、にゃい」
「こっちじゃ、電源コードがあっても意味ないからな。魔石で動くようにしてみた」
“ふぉ! しゅごい” とびっくりしていると、ダンジョンマスターが箱の中を見せてくれた。その中には……、ビー玉のような魔石が三つ入っています。ダンジョンマスターは、それを一つ一つ指差しながら
「端から、水の魔石、雷の魔石、風の魔石だ」
と言った。“ましぇき、みっちゅ”、ですよ!
前世の私がよく読んでいたラノベだと、だいたい異世界移転とか異世界転生の先は、 “剣と魔法” の世界が多かった。
私が生まれたこの世界は、剣はあるが魔法はない。魔物はいるが、妖精はいない。人間は前世の人間と変わらず、ただダンジョンの中だけがチートな “剣と魔法” の世界。
詳しく言うなら、ダンジョンの中のダンジョンマスターと魔物さん達だけが “剣と魔法” の世界のような住人なのだ。そして、ダンジョンから生まれた魔石だけが、魔法の
例えば照明、明かりを灯すのは
ほんの少しの薪と火、それに小さな火の魔石があれば、何日かは暖炉の火は燃えたままになるし、ほんの少しの氷と水、それに氷の魔石があれば、夏の間困らないくらいの氷を作り上げることができるのだ。
目の前の二槽式洗濯機も、魔石のおかげで桶一杯の水で洗濯できるらい。ちょー便利。
「屋敷用に三台な、戻って帰れ。このほかにも二台マージェに渡してあるから、あとは向こうがなんとかするだろう」
「ありあとー!」
私は、二槽式洗濯機の周りをくるくる回って喜びました! これで、ランドリーメイドさん達の冬の洗濯が楽になるね!
「で、グルナの誕生日プレゼントだが。」
えっ!、二槽式洗濯機じゃないの?
「これだ!」
と、ダンジョンマスターが出したのは
「てぃーぷいてぃー」
そう、それはポータブルDVDプレイヤー。
「前、テレビはこの世界ではオーパーツになるからいらないって言ってただろ。でも、きっと見たくなる時もあるはずだ。だけど、いつもここにこれるとは限らない。だからな、これもっとけ」
もらったDVDプレイヤーは、少し分厚かった。下に魔石を入れる所があって、虹色の魔石、雷の魔石、金の魔石が入っていたから。
「あと、これもな」
渡されたのは、アニメとかミュージカルとか映画のDVD。
「いっぴゃい!」
わーい♪ 色々なDVDをいーっぱいもらって、思わず小躍りしちゃったよ!
アニメは、お子さま向け多し。色々なパンがバイ菌をメッ!するやつとか、やつとか、やつとか。パン、多くない?
あっ、セーラー服を着た、星の名前の美少女戦士のアニメもあるよ! ちなみに、私は冥王星が好き♪ 麦わら帽子の海賊のアニメとかもある。
ミュージカルもたくさんあって、見るのが楽しみだなー。
「大きな画面で見たい時は、いつでも来いよ。同じDVDも、全部ここにもあるからな」
「あい!」
大画面で見るアニメや映画、いいよね! ミュージカルも迫力があっていいと思う。思わずニマニマしていると
「グーちゃん、私からはこれね」
と、お姉さんが箱をくれました。もらった箱を開けてみてびっくり!
「ふぉぉ! ゆーぷいらいちょ!!」
そう、その箱に入っていたのは、数種類のUVライトと交換用の電球。
「グーちゃん、こっちの世界には電気がないから、初めから自分が使う電化製品はあきらめてたでしょう。レジンは太陽光で硬化すると時間がかかるみたいだから、ダンジョンマスターに頼んでみたの」
「グルナはこれを産業にするんだろう。瑠璃から話を聞いて、マージェとも話し合って、同じのを大量に作る予定だ」
「おねえしゃん、たんじょん、まちゅたー、ありあと」
嬉して嬉しくて、思わずうるうるしちゃったよ!
「あと、これね。はい」
「ゆにこーん!」
それは、圧縮されたユニコーンのぬいぐる。圧縮されてるから潰れユニコーンだけど、開ければ膨れるはず!
「開けていいよ」
「あ〜い♪」
両手を使って、よいちょよいちょと開ければ、可愛く膨れて私の身長より大きくなった! しかも、三頭もいましたよ! ピンクとグリーンとイエロー、可愛いです〜♪
その後、魔物さん達とちょっと遊んでからダンジョンからお屋敷に帰った。
もらったプチスライムと子羊を “よいちょ” と抱っこして帰ろうと思ったけど、“倒れるー! 危ないー!” と皆から心配され、結局頭にプチスライムを乗せた子羊が、私の後をついてくることになった。
お姉さんと繋いだ手をブンブン振りながら時々後ろを振り向くと、回りをキョロキョロみながらトコトコついてくる子羊。
「かあいぃ!」
「ほんと可愛いね。グーちゃん、名前はどうするの」
「あちょて、ほんみてきめゆ」
そう、後で本を見て決めるの。某出版社の、幻想世界お名前辞典だよ〜。
「あっ。お嬢様、お誕生日おめでとうございます」
お屋敷の廊下を歩いていると、向こうからマージェさんが。そのマージェさんの姿を見たとたん、私は釣られるようにマージェさんの元にとことこ歩いて行きましたとも!
そしてマージェさんの足元で、つま先立ちで両手を上げる、上げるのだぁー!マージェさんが両手で持つ
「あぁ! グーちゃん、後ろに倒れるから!」
お姉さんがささっと後ろに来て、両手で支えてくれます。
「お嬢様、ほんとに馬が好きですね。はい、研究所の皆からのプレゼントです」
「ありあとー!!」
私は、マージェさんがくれた
「瑠璃さんから、資料をもらって作ったんですよ。よくできてるでしょう」
「あい! クーちゃん〜♪」
それは、ただの馬のぬいぐるみじゃないんだよ、クーちゃんのぬいぐるみなのだ。
だって青毛だし、尻尾と
「で、お嬢様。何でスライムと羊が、お嬢様についてまわってるんですか?」
「たんじょん、まちゅたーが、くれたにょ!」
私は元気よく声を上げ、胸を張って答えたましたとも!
その後、自分では運べないから、マージェさんにクーちゃんのぬいぐるみを部屋まで持ってきてもらい、ベッドの横に置いてもらったの。ベッドの横でクーちゃんに、私を見守ってもらうのだー。
私のベッドは大人用のすのこベッドだから、お姉さんからもらったユニコーン三頭は、ベッドの上に綺麗に並べて一緒に寝るのー♪
その後、お姉さんとマージさんも一緒に夕食を食べた。
長方形のかなり大きなケーキで、私の大好きな黄緑色に輝く葡萄がふんだんに使われていて、真ん中にあっちの世界で買ったと思われる “3” の蝋燭がさしてあった。
“わぁ〜い、葡萄! ケーキ、うまうまでしゅ♪” 皆で少しずつ食べて、後は使用人さん達にも食べてもらうんだ。
街に住んでいる使用人さん達には大きめに切り分けてもらい、家族で食べれるようにしてもらうの。
プチスライムちゃんと子羊ちゃんにも葡萄をあげたら、美味しかったようで “きゅぴきゅぴ” “ヴェーヴェー” 言いながら食べてた。
今日はお姉さんがお泊まりしてくれるから、女子会なのです! お祖父様、お祖母様、お母様、使用人さん達からも誕生日プレゼントをもらって、忘れられない誕生日になりました!
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次回投稿は7日か8日が目標です。
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