第5部 理想郷のお店《3》

『ちゅーぱー』


 スーパーの前で、私は入口を指差し言ってみましたよ♪

 今日は週に一度の均一セールと言うことで、駐車場には車がいっぱいです。わぁ〜、ワクワクします!

 スーパーの中に入ってみれば、右側が食品売り場で左側が日用品売り場になっていました。

 まず私達が目指すのは、左側の日用品売り場の奥にある、あののコーナーです! そう、“” と書かれているあの場所ですよ♪

 お姉さんの話によると、冬物商品のほとんどが、半額か半額以下で買える値段なんだとか。宝の山〜♪ スーパーのプライベートブランド、ぜんぜんオーケーです!

 私が商品をみながらコレと指をさすと、キャメリアがその商品を取ってくれます。100均では、あちらのお店と違い過ぎて、どうしていいのかわからずオロオロしていましたが、なれてきたようですね。お姉さんも、優しく見守っています。

 私は、ショッピングカートの上のカゴにその商品を入れる前に、お祖父様とキャメリアに


「なか、さわってみゆ」


 と、言いました。私の言葉に、二人はその商品を触ってみると


「おぉ!」

「まぁ、暖かい」


 と呟きました。そう、それは。こちらの世界では、冬になるとお世話になるあったかパンツ。パンツの裏がふわふわのシャギーになっている物です。

 あちらの世界の冬は、雪が降り積もるほどではないけど、時折雪は降るらしい。お婆さんが住んでいた家もすきま風が入りそうな家だったし、お屋敷の中でも寒いところは寒い。

 そんな冬の日にこんなあったかパンツがあったら、きっと過ごしやすいと思う。ドレスの下にも着れそうだし、外でお仕事する人にもピッタリ。ぜひとも錬金術の箱に入れたい! この生地が領地で作れたら、きっと役立つと思う。

 そして、マイクロフリースのパーカーと、裏ボアのパーカー、ふわもこの部屋着も買いました。どれか一つでも、領地で作れますように。


『グーちゃん、あったよー』


 お姉さんが、私がどうしても欲しかったものを持ってきてくれました。


『おねえしゃん、ありあと』


 私はそのくるくると巻かれた物を両手で受けとると、“あい” とお祖父様に向けます。お祖父様は私を抱っこしている反対側の手でそれを撫でると、その肌触りにびっくりしたようで


「これはいったい、何に使うのだ。やわらかくふわふわで、とても肌触りがいい」


 と言いました。私は


「ねゆとき、こえ、かけゆ。あっちゃかい」


 と答えた。お祖父様は “これを” と、驚いていた。

 あちらの人は、寝ることに無頓着だ。寝ていてよくわからない時間より、起きている時間を大切にする。だから、ベッドの質はとても悪い。

 お婆さんの家で見たベッドは、こちらの世界のすのこベッドのような物に板を置いて、その上にわずかばかりの藁を敷き、上から綿の布をかぶせていた。上から掛けるのは同じく綿の布、あれでは安眠には程遠い。

 王都のアルボのところには敷き布団があったような気がしたけど、あれは大きな綿の袋に藁を入れてるだけだと言ってた。

 貴族のお屋敷の敷き布団には羽毛や毛皮が入っているけど、ベッドが小さい。横幅はけっこう広いのに、縦の幅は狭いのだ。背の高い人は、足が出るんじゃないかな。

 もっともあちらでは、地位が高ければ高いほど、いくさやら権力争いやら暗殺やらの危険性があって、ゆっくり寝ている時間はないらしい。

 でも、でもなの。私は前世で睡眠の大切さを学んだし、人生の3分の1は寝てるんだからベッドが大切なことも知っている。

 この国では辛い戦も終わり、我が領地は王都から遠く権力争いも関係無いし、家族や領民との関係も良好だ。少しくらいは、他の領地よりも安眠を求めてもいいんじゃないかな。

 その分、各家やお屋敷の防犯対策に力を入れたらどうだろうか。

 ちなみに、工場にあった二段ベッドは、隣国の商人のコルポールティス商会の人が、海の向こうの商人さんから話を聞いて作った物らしいよ。

 と言うわけで、私は領民にもお屋敷の皆にも、安心してゆっくり睡眠を取って欲しいのだ!

 そのためには、冬の寒い時期にこのマイクロファイバーの暖かい毛布は必需品だと思うの。

 しかも、このマイクロファイバー毛布、こちらの世界では軽くて安い。ぜひあちらの世界でも、安くできないだろうか。もちろんこれも、錬金術の箱行き。余分にもう一枚買って、冬はこれでぬくぬくしたいよー。

 そして今、私はとある商品の前で立ち止まってます。

 マットレス……、確かにこれがあれば、皆の睡眠は格段に上がる。もう、すごく上がる。でも、いくら半額でも、私には高い……。欲しいけど、高い。いつか、お金がたまったら欲しい商品。


『ねぇ、グーちゃん。これ買う? 半額なんて、めったにないよ。』

『でも……、おかね、たりにゃい』

『私が、出しとくよ』

『おねえしゃんに、めいわく、かけゆ』

『次は定価でしか買えないかも知れないし、プレゼントするよ』

『ちょれは、だめ!』

『じゃ、少しずつ返してくれればいいよ。500円ずつとか。』

『おねえしゃん……、めいわく、ない』

『ない』


 私は、すごく悩んだ。でも


『おねえしゃん、おねがい、しましゅ』


 と、答えた。


『うん、わかった。これでグーちゃん達のベッドが、もっといい物になるといいね』


 私とお姉さんの話を聞いていたお祖父様は、内容はわからないだろうにお金の話だと思ったらしく


『メイワク、モウシワケナイ。アリガトウ』


 と言った。そして


「何とかして金を作らなくてはな。あの方に相談してみよう」


 と呟いた。また、あの方って誰だろう?

 そのあとは、クリアランス商品ではないけど、お祖父様の服を買った。また次に来る時のために。今日の借りてる服は、ちょっと小さめだからね。

 そして、最後にクリアランスのスリッパです。あちらは基本的にいつでも靴だけど、いつも綺麗に掃除をしてくれるメイドさん達がいるお屋敷ならともかく、そうじゃない工場の方は、衛生的にも中はスリッパを使った方がいいと思う。これはふわもこスリッパだけど、普通のスリッパなら領地でも作れるよね?

 さぁ、次は食品売り場です。とにかく調味料ですよ! この際、メーカーとかは関係ないのです、買うぞー♪

 まず、100円均一から。マヨネーズ、ケチャップ、お好み焼きのタレ、たこ焼のタレ、焼きそばのタレ、焼きうどんのタレ、とりあえず何でも買っておきますよ。カレールー、タルタルソース、コンソメ、うどんスープも必要。ぽん酢や酢、その他にも色々買っておきましょう。

 次200円均一です。まずはポットケーキミックス、そしてめんつゆやすき焼きのタレ、ドレッシング、醤油やみりんなんかも買いますよ。

 均一には関係なく、ベーキングパウダーやシナモン、シチューに缶詰、味噌や焼き肉のタレなんかも必要でしょう。そして


「むにゅー」


 目の前には袋入りの唐揚げがあります。そうです。欲しいです! でも、その袋には “レンジで○分” と書かれています。えぇ〜、レンジー。油で揚げるだけならいいのにー。レンジ、お屋敷にはありません! 油で揚げるだけの唐揚げもあるけど、のです。お値段的にはレンジの方が安いの、どーしよーう


『グーちゃん、悩み事?』

『れんじ、やしゅい。でも、れんじない』

『そっか、うちのレンジ使う? グーちゃんのポシェットに入れとけば大丈夫でしょう』

『いいのー』

『いいよー』


 じゃ、遠慮なくレンジの唐揚げの方を購入。こっちならチキンナゲットも買えるね! あっ、ハンバーグも買っとこう。

 あとは、お祖父様のお酒です。今やビールも高くてたくさんは買えないけど、ビールを数本買いました。

 そして最後は、


『おかちと、あいちゅ』


 なのです。ここは、歩いてお菓子コーナーに行くのですよ♪ 子供用のお菓子は、ちゃんと子供の手が届く所にあるからね! 子供用の手提げカゴにお菓子を数個いれ、お祖父様に手をひかれてアイスコーナーへ。途中、プリンと菓子パンも入れてご満悦です。アイスも買ってレジへ。

 残り11000円ほどを、見事に使いきりました。

 あぁー、お買い物終了してしまいました。また野菜売りを頑張らないと。その前に、お屋敷に帰って仕分けです!




********


スーパーでたくさんお買い物をしたグルナ達。はたして、そんなに買えるのか。スーパーの価格は我が家の近くのスーパーの価格を参考に書きました。ちなみに、冬物衣料の最終価格は毛布も含め498円、スリッパ98円でした。( ´∀`)


次回投稿は7月3日か4日が目標です。

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