[短編(市場)]ゲームシナリオ3

「どうか、しました?」

 座り込んでいるこっちを見て、声かけられた。

「剣を持ってるのに、なんで魔法を使ってるのかなって」

 イーライはつい最近、騎士に入団したってタマモから聞いた。

「これは、あったほうが便利かなって、勉強中なんです」

 騎士団の施設の一角で、繰り返し、繰り返し、魔法を放つ。ゴォと唸る炎だったり、パシャとずぶ濡れになるくらいの水だったり。腰に剣を携えて。

 変だ。変だと思う。けど、どうしてそう思うのかは分からない。魔法を見るのは、多分、初めてなのに。

「イグラスさんも、やってみますか? もしかしたら、適正があるかもしれませんから」

 ちいさな器用な手に引かれて立ち上がると、一枚の紙を渡される。見るからに難しそうなものが書かれてる。

「これで魔力を集めて、水とか、火とかになるよう、イメージしてみてください。感覚的なので、どうしたらいいか、は説明できないですけれども……」

 苦笑いを浮かべるイーライの言う通りにしてみる。

 紙を手のひらに乗せて、風で飛ばないように角を指で押さえて、そこに、魔力が集まっていると思いながら……燃え盛る、火になれ!

 じっと紙に念じる。ボウボウと、パチパチと鳴る、火が起こって、そこには熱があって、暖かくて……。

「魔力は集まっているようですけど……もっと、もっと魔力がこうなってほしいって考えてみてください!」

 身を焦がして、肌を焼く、赤々とした火よ、起これ。

 途端、ゴウ、と熱を感じた。

 鱗の手のひらより、少し上で、燃え盛る炎が、握れば消えてしまいそうな魔法が。

「初めてなのに、すごいですよ、イグラスさん」

 にっこりと笑うイーライに、僕はもちろん、胸の高鳴りから、笑顔を返した。

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