[ネタ]ヒトクイのあやかしども
自らの身体に対し、取るに足らぬ獲物を締め上げ、ぐいと呑む様に、杉嵩は及び腰になりながら尋ねる。
「白蛇、おまえ、人間喰ったこととかあんのか?」
餓鬼と呼ばれるただの名無しの、どこからか沸いてでる妖怪たち。それを補食するのが当たり前なのだが。
「我は、ない。リムいわく、父母はあったらしいぞ? 贄として寄越されたものばかりをな」
どこかほっとする帯刀している青年は、いつもならばその脇腹に寄りかかるのだが、今日ばかりは背後にあった大木に背を預けた。
「……思えば、人の味とはいかなるものか……あのとき試しておけば、よかったかもしれんな」
無表情がずずいと眼前に寄ってこれば、思わず得物に手をかけ、
「はは、冗談だ。喰うにしても、おまえのようなひょろいやつよりも、丸々と太ったやつがいい。文字通り、腹が膨れるでな」
その刃の届かぬ位置で、鎌首をもたげる。
「……びびらすんじゃねぇよ」
はて。首をかしげて見せる。
「我は何もしておらん。ただ餓鬼を喰っただけ。よもや、こやつらに同情でもしておるのか? 向かいの崖の鬼にでもほだされたか?」
そんなんじゃない。真ん丸な眼から視線をそらして、さぁ、今日もみなしごは独り、語らう。
◆◆◆◆
人命を奪う。そんな伝承は数あれど、ではどうしてそうなったのか、語られることは少ないですよね。これが犯人という役割を与えられた登場人物ならば理由を散々述べるのでしょうが、神話なり昔話なりに出てくる彼らには、純粋に悪だという表現しかされていません。
仮に各災害の原因を神の気まぐれとするならば、なぜそうなったのか、を考えてみると面白くなりますよね。
例えば地震。なんでナマズが暴れているのか、巨人は歩くのか、地底の存在が蠢くのか、亀が身震いしたのか。
そこには論理なんていりません。無理くり破れかぶれな内容でも、あくまでもそういう存在だから、と掃き捨てられる内容です。
では、なぜ人は贄として捧げられたのでしょうか。幻想でも、現実でも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます