[ネタ]ホラーホラーしてる

 陽の出ている間は見通しのいい、どこまでも見える道。ところがそれを過ぎれば、真っ暗な道。道を照らす白熱灯どころか、月も星も灯してくれない場所を通るとき、こうしなければならないという噂がある。


 持った明かりを、上げてはいけない。


 誰が言ったか噂話は、いつの間にか習わしとなり、人々の生活に溶け込んでいく。

 こんな田舎、誰が開発するか。まるで誰かがそう言っているかのように、暗い道の安全の確保なんてものは、一切されることはなかった。


 ある日、そこを通る少年が一人、歩いていた。

 照らしていいのは、地面だけ。照らしていいのは、地面だけ。

 そう繰り返しながら、汗のつたう手でぎゅっと懐中電灯を握り、歩いていく。

 かつての噂話を信じて、ただ歩く。行って帰るだけだ、ともう片方の手を震わせて、心を奮わせて、ずんずんと、しかしゆっくりと歩く。

 何事もなく、往路は明かりに照らされる地点までやってくる。ほう、と息をついた少年は、ゆっくりと振り替えって復路を見据える。

 畑と田んぼばかりに挟まれた道。遠く遠くに見える明かり。またここを通らないといけないのか、と呟くも、再び踏み出した足取りは明らかに軽い。

 何もないと勝手知ったるこの道を、少年は乾いた腕をぶらつかせながら歩く。当然、落とさないように手首についているストラップに従い、懐中電灯も踊り始める。

 やがて、折り返し地点の明かりが見えなくなる。まだまだ先は長いと電灯を掴んだ。手の向きに合わせて傾けられた電灯は、遠くを照らした。

 そう、遠くを。

 遥か遠く、手を伸ばせば届きそうなくらいに瞬いていた星が、そこにはある。

 はっとした少年は噂話に逆らって、明かりを前に向けた。


◆◆◆◆


 ホラーといえば民話とか、噂話ですよね。

 夜に笛を吹くと蛇が出る、夜に爪を切ると親の死に目に会えない、とかとか。

 どれも近所に迷惑にならないように、とか怪我をしないようになどの事情を隠すために語られているものです。


 しかしその事情が、真の怪異を避けるものだったとしたら?

 たとえばこの思い付きで作った話だと、明かりを上に向けたら、反対から来る人の目を眩ませるから、という理由から来ている、と推測できますが、これがそこらに巣くう怪異へと認識を阻害する目的だったとしたら?

 これでホラーなネタはできましたね。あとはどう描くか……もっと真面目に作り込めば使えそうですね、このネタ。

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