[日記]フタすると不便になる

 必要な材料を刻み終えて、加熱したフライパンに少しの油を。パチパチと弾ける様に警戒しつつ、軽く混ぜる。

 そして火が通ったかの確認などせず、適度に混ざったことを目視したらフタをして蒸し焼きにする。少しばかり時間をおいたら再び開けて、調味料をパラパラと。

 そこからさらにフタして、もし水分が多いなら水気を飛ばして、できあがり。簡素飯。しかし入れるものによって、素直に味や食感が変化するのだから、献立というには雑ながらも、ちゃんとしたものにはなってる、と思われる。

 特に思い付くことがなければこれを作っているが、まぁ、よくも飽きないものだ。いや、飽きている。しかし弁当ばかりも、あっという間に飽きがきてしまえのだから、それを鑑みれば、大いに結構なことだろう。


 そろそろ出なければ。決して、睡眠をとるためだけの空間ではないここを後にしようと立ち上がる。

 そのとき、ふと腿のあたりに違和感を感じる。

 なんというか、すかすかで、ふわふわで。ぴとぴとと布地が肌に、軽く触れているのだ。

 その正体はすぐに分かる。ズボンのポケットにものが入っていないのだ。ハンドタオルを折って、入れる。そしてポケットティッシュを、と思ったそのときである。

 面倒だな……。

 そこにあるのは、いつしかのポテチの入ってた箱。捨てずにとってあり、これがまた適当なものを入れるのに便利なのだが、今はポケットティッシュ入れになっていた。徳用のものがちょうど二つ入るうえに、取り出すのも容易いからだ。

 フタがなければ。

 箱の上には、横着して置いた本、あるいはチラシが乗っている。片手でつかんで持ち上げるには苦のない量だが、問題はその手間だ。

 最近はティッシュの消費も抑えられていて、なおも怠惰が湧いてくる。なくてもいいんじゃない? 一日くらい、という謎の自信を持つ悪魔がささやく。

 しかし体調など一瞬で崩れるもの。そう諭してくれる善心が私の身体を突き動かして、ポケットティッシュを取り出すことができた。

 もう片方のポケットにつっこんで、さて、行くとしようか。

 ほんの、ほんのちょっとしたことであるには違いないはずなのに、やったのは自分なのに、面倒だとしてしまう。

 ……いい加減、本も読まないとなぁ。買ったのいつだっけか?

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