[短編(オリ)]荒廃世界の転生生活1
やぁ、と漫画のようににっこりと笑うのは、ひょろりとした、おそらく年上に見える大人の人でした。
「君も災難だったねぇ。でも、嘆くものではないよ。大丈夫、君は私と出会えたんだ。運がいい」
絹を思わせる服に袖を通して、石の階段に腰かけています。そして、同じ視線の高さで、白とも金ともつかない瞳で、こちらを見つめてきます。
「異世界転生の門戸へ、ようこそ。エルくん?」
テレビで見るアイドルのような人にニックネームで呼ばれて、つい、答えてしまいます。
「うん、元気がいいね。じゃあ、転生する前に、教えてくれないかな」
多分、神様なんでしょう。なんでも知っていて、ここに導いてくれた。
「君をこれから転生させる世界はね、俺が創ったものなんだよ。それで、定期的に転生者を送り込んでいるんだ」
神様に会えるなんて、なんて幸運なことなのでしょうか。
「でも、単に世界を創ってなんて、全能神の二番煎じ。だから、俺はこうした」
信じていたわけではないですが、実物を目前にしてありえない、なんて口が割けても言えません。
「送り出す者たちに、希望する能力を一つだけ、与えるんだ。俺はその世界の創造神だから、そうなるように理を変えることだってできる。それで、転生者に楽しんでもらおうって思ったんだ」
にこやかな笑みは、不思議と心を見透かされているような気分です。
「もちろん、そこから次の転生はない。エル君みたいな子に楽しんでもらいたくてね」
そうですか。第二の人生、というよりも、第二の生命を与えていただける、ということでしょう。
「さ、教えてくれないかな。エル君が欲しい能力、スキルは、何だろう?」
あぁ、これが言っていたとおり、異世界転生というやつなんですね。もちろん、お願いするものは、決まっています。
すると、神様はきょとんとして、こちらを見つめていました。
「それでいいのかい?」
もちろんです、と即答すると、ある人は不老不死だとか、なんでも持ち歩ける能力だとか、おっしゃっておりましたが、気持ちが揺らぐことはありません。
昔から、欲しかったんですから。
「分かったよ、エル君。じゃあ特別に、二つ、おまけしてあげるよ」
神様は青空を指差しました。いえ、一つ目、ということですね。
「
言葉の意味はよく分かりませんが、神様は続けます。
「二つ目は、転生する場所、リスポーン地点って言った方がいいかもね。これを、能力の試しやすい場所にしてあげよう」
えっと、どういうことでしょうか。
「では、よき第二の人生を」
ふわりと消えるのは、神様だけではありません。世界が、真っ白に……。
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