[創作論]魔物
やぁ、と下から声をかけてくるのは名も知らぬ仲間である。
「下りて冒険者襲わなくていいのか?」
かくいう自分は木の上で、ひょっこりと頭が飛び出ている太い枝の上で、空を見上げていた。
「たまにはいいじゃないか。魔物にも休息は必要だろ」
真ん丸な月は、明るく眼下の森を照らしている。
「魔物ねぇ。陛下が産み出したものをそう言うらしいけど、ぶっちゃけ、どうでもいいよなぁ?」
うん。軽く同意する。人間とかいうのを襲ってしかるべき、という風潮に習い、時折襲っている。正直、なんでこんなことをしないといけないのか。
のんびりとしていたい。マナさえあれば生きていられるのだから、夜風に吹かれて、とろんと眠気に揺られたい。
月を見上げて、あれを掴んでみたらどうなるんだろうと考える。ミシミシと揺れを感じると、仲間が隣にいた。
「おお、ここいいな。寝ようぜ、どうせ誰も見ちゃいないんだからよ」
それもそうだ。冒険者狩りは好きなやつに任せればいい。
「悪い魔物じゃないよってか」
そんな日々が得られれば、どれだけいいことか。首に手を伸ばせば、カリカリとした硬いものが音を立てた。
◆◆◆◆
魔物だから危険だとか、簡単に言うことはできますが、本当に危険なのかは、結局は害があるかどうかなんですね。
ぷるぷる、悪い魔物じゃないよ、なんてのも使い古された言葉ですが、そういう魔物って、基本的にマスコットもできる外見してますよね。
では、平穏を望むそうではないものたちはどうしているのでしょうか? 洞窟の奥でひっそり暮らしているなんて場合もありますが、基本的に町で穏やかに暮らしているなんてありませんよね。
結局は害があるかないかの二択で選んでいるんですよね。
力で圧倒できるし、何かを企んでも対応できるから共に暮らす。何よりもかわいいし、なんてどの世界観でも、なんだかんだ共通だったりするのではないでしょうか?
そういった無意識の共通思考を利用して、魔物を飼い慣らすなんてものもありますが、結局はマスコット。どこか愛嬌、あるいは人間と同じスペックが必要なんですよね。
魔物なんだからもっとモンスターしてくれ! そう思う、今日この頃なのでした。
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