[短編(オリ)]私の描くゲーム式異世界物語1

 おそらく、ここは街中だろう。間違いなく、街。そして、現実ならビルが大量に並んでいたはずだが、どうにも様子が違う。

 石造りの建物、車は車でも引き車。武器、防具らしいものに、見覚えがあるようなないような、食べ物も多数。

 そして、記憶がある。先ほどまで道すがら、ホットスナックをかじりながら目的地へと向かっていたはずだ。だが頬をつねっても、ちくちくと爪痕が残るばかりだ。

 間違いない! 転生とか召喚というやつか!

 そう、ここはきっと誰も知らない世界。魔法があって、スキルがあって、魔物がいて、魔王を倒すやつだ。そして姫を、世界を救って英雄一直線なやつ!

 そうとなれば実践と実戦あるのみだ。じろじろと見てくるやつらなんてどうでもいい。ともかく、歩き出すのみ。

 広い街だったが、運良くギルドを見つけて、登録して、支給品の装備を身につけ、早速簡単そうなクエストを引き受ける。

 森での材料の調達だ。

 同行者である先輩の視線をよそに、ずんずんと進んでいく。そして躍り出るは、小型の獣だ。しかも、不意打ちなどせず、正面から堂々と襲ってくる。

 よし、無意識のうちに高鳴る鼓動を聞きながら、そういえば何が使えるのか確認してないな、と我に帰る。まだ相手は襲ってくる感じはしないし、確認しておこう。

 メニュー。それはパーティーの状態を把握するための必須ツー……?


 一度、メニューを閉じた。そして、もう一度、メニュー、と力強く念じると、同じ光景が。ウィンドウが。

 メニューは開かれた、と言っていいのだろう。少なくとも、欲しい情報は、戦闘パラメーターと、スキル欄の内容だ。ならば[状態]とか[ステータス]、とかを選択すべきなのだろう。

 まず、ウィンドウは上中下段に分かれている。

 上段には[オススメスキル]、[チャートで選ぶスキルツリーの取り方!]、とかそんなポップが右から左へ流れている。

 次の場所には[残ポイント 0]、[次のレベルまで 10]、[NEXT 50]とか書いてある。選択はできないらしい。

 最後には[オート解放のススメ]、[武器屋に聞く一品]、[賢者に聞いた! その道のり-序-]といったものが流れる。

 選択できるのはポップだけのようだ。どこにもスクロールなんでできない。

 固まっていると、新人よう、と先輩が声をかけてくれた。

「さっさとしねぇか。お前の受けたクエストだろうが」

 隣に歩いてきた彼は、剣を一応抜く。

「あぁ、おまえ、転生か召喚者か。メニューなんてアホらしいものは諦めな。そんなものに頼ってちゃ、命がいくらあっても足りねぇよ」

 しびれを切らしたらしい獣は、先輩の手によって屠られる。

「神様は、バカなんだよ。メニューなんて使うより、頭で計算して、技と魔法を磨く方がよっぽど効率がいい」

 そう吐き捨て、行くぞ、と歩き出す先輩に、メニューを閉じてついていくしかない。

 そう、これは間違いなく「クソUI」だ。


◆◆◆◆


 タイトルは「拝啓、創造神様-あなたを殴りにいきます-」、とか「俺は創造神にケンカを売る-この仕様にした責任者出てこい!-」とか? 無双とつけるなら「「メニュー」で無双し、神へと至るには」とか?


 さて、昨今の物語に自然と現れる神器、いわゆる「メニュー」ですが、これが便利なんて保証はどこにもないんですよね。

 それに、主人公だけが使えるこれ、誰が作ったのでしょうか? どうして主人公だけが使おうと思うのでしょうか?

 答えは簡単。世界を作るときに神様が、生活を楽に送れるようにと使えるようにした。しかしユーザーは欲しい情報が得られないため、住民たちはそんなものに頼らない生活を送っているからです。

 すなわち、転生とか召喚されたやつはこれに絶望するんです。電子書籍以上に便利なことができるはずなのに、何もできないクソUIのせいで。

 と、まぁこの短編の経緯はこんな感じです。


 この物語、わりと簡単に流れを構成できそうなんですよね。

 まず、最終目標は「クソ仕様にした神様を殴り、できれば改修させること」。戦闘手段は「クソ仕様のメニューから技、魔法を発動させ敵を撃破すること」。主人公は「悪態付きながらメニューを使いこなすスゴイヤツ」、仲間は「メニューなんて使わずともそれなりに戦える者」。とどめに「クソUIのサンプルをかき集めること」で面白さが増すかと。

 あとは障害とかを設置するだけで10万文字はいけそうですよね。あとは物事の運搬力さえあれば、あっさりと。

 しかし書く気はないので、一発ネタですねぇ。


 さて、今日も今日とて、お昼は何にしましょうか。

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