[短編(オリ)・創作論]終わりを望める愚か者
俺を殺してくれよ。
病床で、あらぬ方向を見つめて言った。この部屋には、彼と自分しかいない。間違いなく、他でもない自分に言っているのだ。
「何回やってもダメだ。あのときから、いくらリハビリしても、一向に良くなんねぇ」
悪態をつく彼の顔は見えない。
「あのときみたいに走れねぇ。あそこにいても迷惑になるだけだ……俺の居場所はねぇ」
震えているのが分かる。
「いても、仕方ねぇだろ? 」
なんと答えるのが正解なのだろう。
「役に立てない俺が生きてても仕方ねぇ」
だから殺してくれ、と。
「バカヤロウ」
勝手に腹から出てきた押し殺した言葉に、彼は振り返らない。無償に足踏みをしたくなる。彼を無理矢理にでもひきずって、仲間の前に突き出したい。
謝らせたくなるほど、意味不明な発言に、苛立ちを覚えている。
◆◆◆◆
ラノベではあまり見ない気がしますが、死を懇願するという場面はよく見かけますね。くっ殺というワードが生まれるくらいには、(シチュエーションはともかく)有名なものでしょう。
で、そのくらい追い込まれているシチュエーションでなければ、こういう懇願は発生しないんですね。
シチュエーション例として、拷問、依存度の高いものの喪失、絶望、贖罪でしょうか。いずれも精神的負荷が高いもの、ということが共通項ですね。精神摩耗が進んでいればなおのことです。
死を持ってすれば開放されるという「あるかもしれない、未知の希望」を目指す。実際、死後に何が起こるかなんて誰も知らないのですから。私は電源を抜いたPCのようにブツッと切れるだけ、と思っていますが。
逆に同じ状況で「死ではない何かに希望を見出す」にはどうしたらいいでしょうか?助けがくるとか、次の依存先が現れるとか…表現が難しいですね。
希望がないことを剣に立ち向かう、ということもありえますね。後に引く理由はない、というシチュエーション。
そこまでにどれだけ感情移入できるかも腕の見せ所ですが、本当に絶望できるくらいの大事件なのか。作るときはしっかりと吟味したいものですね。
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