[短編(市場)]さまーいべんと3

どうして、みんなは平気なんだろ。隣で伸びているラクリは例外として。

テラーが店に現れて、ギルを呼んだ。いきなり、海に行きませんか、と言われて、もちろん彼はぽかんと口を開けたのだった。

「たまには、羽を伸ばすのもいいとは思いますよ」

彼は獣じゃないし、羽なんてないのに、テラーはそう言った。それから軽く話し込んだあと、私と共にここへと来ることになった。

それにしても、暑い。じりじりと照りつける太陽、身を焼くような砂。遠くには冷たそうな水が溢れんばかりにあるが、あれは飲めない、とギルには何度も言われている。

なので、海へと流れ出ているらしい川の近くの木陰を陣取り、雑草の上に寝そべっている。首を伸ばせば飲めるので、いい場所を取れたと思う。

かくいうギルは、テレアに頼まれたのか、遊びたいらしいテルの相手をしていた。他にもリエードと騎士二人。よくよく見ればタマモも、比較的浅瀬で遊んでいる。

テラーとテレアは彼らを遠目に眺めながら熱砂に座り込んでいる。平気なの、と思うけれど、二人は私たちと違うドラゴンなのだから平気なのだろうと思うことにする。

残り一人、クトゥールはギル以上に太い腕で砂をかき集め、積み上げていた。何をしているのだろうと考えるが、ギラリと目に刺す光にびっくりして、熱に思わず目を閉じた。

木陰の隙間から差し込んだ光が、いたずらっぽくしょっぱい風に揺られている。

「ラクリぃ、生きてるー?」

隣で大の字になっている紅竜は目を細めて、

「無理…暑い」

と天を恨めしげに睨んでいるのだった。


◆◆◆◆


山飛竜は標高の高い山に住んでいるので、寒いほうが得意です。紅竜は個体差です。


夏ですねー。セミが轟叫び、太陽が灼熱光線を放ち、金属は歪む。

毎年毎年、なーんで夏なんてものがあるのか、と考えるのですが、たまたまそんな場所だから、としか言えないんですよねぇ。

不毛な思考を毎年してますが、結局何もないんですよね。それでも考えてしまう。

不毛ですよねぇ…

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