[短編(七日)・雑記]GW七日目-ヒナタとバンガ-

都会のある閉じられた一室。カーペットの上に一つの茶と白の毛玉があった。よくよく見れば、ひとつの生命体であるということが分かる。

規則正しく、わずかに上下するそれは一羽の猛禽。警戒心の欠片もない姿はリラックスしているらしく、どこか穏やかな表情をしているように見えた。

精悍なイメージのある猛禽も、飼いならされればこうなるのだろうか。そんな彼女の翼は、半ば以降は白い羽毛になっており、それ以外は赤みを帯びた茶色。つやつやと光を反射することから、まだ若い個体だと推測される。

ガチャ。その部屋唯一のドアノブが傾き、密室は破られた。

「万芽、そんなとこで寝てたら踏むよ?」

姿を現したのは制服を身に着けた女子高生だ。肩につかない程度に切りそろえられた黒髪は桃色のヘアゴムで二箇所、結ばれている。

「なんだい、日向。あんたがあたしに勝てるとでも思ってんのかい」

ぱちくりと目を覚ました猛禽が嘴を開く。だが彼女の声に答えることなく、肩にかけていた学校指定の鞄が放物線を描き、耳障りな音を立てて毛玉の上に落ちた。

「勝てるも何もここは、私の、部屋なの。神様だろうがなんだろうが、プライバシーくらい守ってよ!」

叫びにも近い怒声に、万芽はのそりと立ち上がってから近くの机に飛び乗る。それから日向の方に向き直る。

「プライバシーねぇ。時代が変わったのか、あたしが取り残されているのか……いつ戻ってこればいいんだい?」

勇ましさを取り戻した彼女に、だから、と少女は返そうとするも、分かったよ、と猛禽は机を蹴って滑空する。

「しばらく、旧い知り合いのとこにでもお世話になるよ。親父さんには言っとくから、気にすることはないよ」

日向の足元に着地し、部屋の外へ身軽に跳ねていった猛禽を見送りもせず、一人きりの空間を作り出した彼女は高校生の証を脱ぎ捨てて、日向になる。

誰もいない部屋でベッドに寝転がり、長いため息をついた。

「やる気なくなっちゃった。夕飯まで寝よ」

髪留めも外さず、ただぼんやりと天井を眺める。左へと視線をやれば、T字をした止まり木のようなものが佇んでいる。

「はぁー、勉強めんどくさあぁぁい」

足をバタバタさせる彼女だけの部屋には答える者はいない。


◆◆◆◆


あれ、そういえば七日目!七日といえば暇の七日!なんも考えてなかったけど七日だな!


ということで、暇の七日の、ずっと未来の話。万芽は彼菜の魂を溺愛し、その魂の持ち主、日向とのある一節。

万芽は相変わらず、彼菜のそばにいるわけですが、当の本人は反抗期。でも万芽の大好きな彼菜と比べてめっちゃ反抗するようです。

ちなみに当時は怪異の一人だった万芽ですが、暇の七日以降は、神の眷属として名を連ねることを選んだ、という設定がありますが、それはまた別のお話。


さて、明日は何を描きましょうか。

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