第2話 何でもゲーム世界に転移すればいいってものではない。



ゲームが現実に……。なんてことだろう。

まさにゲーマーの夢が今ここにある。



ーーーそれが、クソゲーでなければだが。



ゲーマーならいや現実とかクソゲーとか思っている人なら一度は思うだろう。

あーあ、ゲームの世界に行けたら無双できるのに。最高なのに。

と。

俺も思っていた。

ラノベでよくあるパターンとして一番熱中していたゲームに転移するような描写が多々存在するが、俺が一番遊んでいたのは、世界的にも有名である世界がブロックて構成されているアドベンチャーゲームである。

人も動物も、食べ物もカクカクしているからあの世界に転移したらそれはそれできつそうだが、少なくともカクカク差がクリーチャーバスタークロスのとはわけが違う。

それは、意図であるか、技術力の足りなさであるかだ。


ああ、まさか2番目に長い時間プレイしていたこのクソゲーに転移してしまうとは……。

鋭く尖った山々、草のテクスチャーが平面貼りされたリアリティーがない……というよりチープさ満載な地面。

緑色の三角形が被さった木。

圧倒的緑色!圧倒的、手抜き感。

特に地形の手抜きは目に余るものがある。

まるでマ○オ64のステージだ。

今は何年だと思っているんだ?

2019年!2019年だぞ!?

この時代に『豪華声優陣!圧倒的臨場感、まるで本物の世界のよう。ゲームの全てがここにある。超美麗グラフィック!!』まさにクソゲーのお手本のようなキャッチコピーだが、これだけ歌っておいてコレ?

メイドインちゃいな……スゲぇ。

まだ懐かしの64時代を思い出せるゲーム的なキャッチコピーだったら良かったがなぁ…。

これで150え……いや、150円だしなぁ。

うーむ、まぁ許せるな。

少なくとも、こんなクソゲー世界に転移しなければ。



先程書いた、『豪華声優陣!圧倒的臨場感、まるで本物の世界のよう。ゲームの全てがここにある。超美麗グラフィック!!』の内容に共感できる要素がこのゲームには存在しないのだ。

豪華声優陣は地雷。ゲームはゲームの操作性が第一、あとはBGMとかバグの少なさとかフリーズしないと、程よい難易度とかストーリーの内容とか、グラフィックとか全てあっての豪華声優陣だ。

ゲームにおいて声優というのはケーキにおけるキャンドルだ。

何だかんだ言って目立つ。一番目立つから一番大切に見えるがそうじゃない。

地下があってのものだ。

例えば生クリームがないから似た色をした木工ボンドでいいや。とはならないはずだ。

腐って虫が湧いたスポンジ、農薬漬けのイチゴ、生クリームを買い忘れ、あり合わせの木工ボンドで代用。そして最後にサンタクロースの形をした少し見た目に凝っていて、なおかつ自然に優しい素材を使い、火の色が青や緑になるとかいうかなりお値段がしそうなキャンドルを乗せたケーキがあるとする。



さあ、食べたいか?


食べたくない。知らなければ一口食べてしまうかもしれない。

虫は外からは見えないし、農薬漬けなら見た目は綺麗なものだし、キャンドルは豪華だし。

だが、それだけ。中を上げればクソ。

豪華声優陣を歌っているクソゲーはキャンドルに金を使いすぎて内容が終わっているケーキと一緒だ。もはやケーキではない。そう、ゲームの皮を被った産業廃棄物である。


それから

圧倒的臨場感。

まるで本物の世界のよう。

超美麗グラフィック!!



この三つ。

このテクスチャー、このポリゴンの荒さを見て言えるのかね?

言えるとしたらお前はUn○ty生まれだ。



最後はこれ。

ゲームの全てがここにある。

ゲームの全てがここにある?

まさにクソゲーの鏡だ。

クソゲーを買いたくない人は知っておこう。

ゲームの全てここにある、豪華声優陣は地雷。


何を根拠に言っているんだ。

グラフィックはクソ、操作性もクソ、裏世界に簡単に行けてしまうクソシステム、木が最強という謎、声優陣に頼る最悪の手、豪華声優を歌っておきながら、彼らに泥を塗るようなゲーム内容、BGMもよくない、モンスターはやけにリアルで重いし、背景が雑過ぎて浮きまくりだし、だからといってクソゲーを極めたわけでもない。


虚しくなるだけだから虚勢をはるのはやめていただきたいものだ。




内心焦っていたが、ようやく気持ちが落ち着いてきたところだ。

さて、どうやってこの地雷原を抜けようか。



クソゲーあるある、その①

木に当たると吹っ飛ぶ。


ちなみにここは森である。

詰んだ。ように見えるが実は脱出方法はある。

俺はこのゲームを遊び尽くしさまざまなバグ技を見つけている。

というよりマルチモードに誰もいないというのに、強くなるにはマルチモードにて実績解除をしなければいけないというのだからバグを使わずして攻略するのはもはや不可能である。

この矛盾性。ゲームの評価が☆1が782、☆5が3なのは納得である。

☆5の3人の内2人はネタ、一人は俺である。

ちなみに完全な趣味でwikiに攻略情報を載せていたりもする。


今から使おうとしている技は2年前くらいに発見したものだ。

今までも、リスポーン地点が勝手に変更されて森の中で"無限吹っ飛びで処理落ち物質透過トルネード"で脱出なんてやっていたが、あんなの画面の中だからいいが現実でやったら吐く。

比較的安全で、なおかつ安定した飛行を可能としている。

そして救いだったのがデータの保持。



初期データで転移してたら色々詰んでたかもしれない。

バグ技で強引に拡張しているインベントリから信号弾と#%_鍋gを取り出す。

前提としてこのゲームはバグだらけである。本来ならマルチプレイにて仲間のプレイヤーに知らせるため使われるはずだった信号弾、これはボウガンもしくは銃、大砲で放つことができるのだが、

#%_鍋gという鍋を特殊な手段を使いバグらせたチート性能をもつ鍋で炒めることができる。そう、信号弾をだ。


クソゲーあるある、その②。

であるが本編がクソなのに無駄に自由度を求めるなんていうことがあるが、この鍋もそれである。

なんと料理を作れるのだ。

先程、炒めると言ったように鍋で焼く、煮る、炒める、蒸すことが出来る。ちなみに鍋にはフタは存在しないし、焼くのはフライパンでしか出来ないが、フライパンも鍋の形をしている。

それで公式が言うには自由自在、数十万種の組み合わせ、らしいがタイミングはもはや勘でしか出来ないというクソで、毎回出来上がり時間がランダムにもかかわらず、技術力不足で見た目が変わらないという鬼畜さ。

一番最近、といっても2年前だが信号弾と一緒にアップデートで追加された幸運のサイコロを使わなければ料理なんざまともに作れやしない。

ちなみに幸運のサイコロは成功率やら回避率やらを大幅に向上させるチート性能のアイテムで幸運の目である7以外を出すと不運というデバフが付与されるというこれまた鬼畜性能、なんだか作者が途中放棄している某ハンター漫画に登場するサイコロのようだが、公式はこれについては何も答えていない。

サイコロは乱数調整をしているので100%幸運の目を出しているが、その話は置いておいて、鍋だが、ただの鍋ではなくこの#%_鍋gは信号弾を炒めることにより謎の推進力を生み出しすことが出来る。


鍋でを右手で構え、左手で食材を投入___する瞬間に装備プリセット変更で左手に持った食材(今持っているのは肉)から信号弾に変更。鍋には投下される信号弾。

鍋底に突き刺さり煙をあげる。

これで準備は整った鍋を持ったまま大剣用スキルである《叩き斬り》を発動。

振りかぶって地面に叩きつけられた鍋は打ち上げられたミサイルのように突如して赤い光と大量の煙を放ち空へと飛び上がる。

現実世界だったら思わず手を離してしまいそうだが、ここはゲームである。

そしてかなり雑なゲームであるゆえ何があろうとも装備中はプレイヤーが解除しない限り装備品は手から外れない。

そのおかげで信号弾が消えるまでの時間、飛び続けられるという謎性能。謎が謎を呼ぶミステリー、空を飛ぶ鍋男の誕生である。



ーーーうぁぁぁぁぁぁあああああ!!


これは俺の声ではない。

ノックバック時のゲーム内ボイスであって断じて俺はこんな野○先輩みたいな声は出さないからな。


テクスチャーがチカチカと点滅を繰り返す荒ぶる#%_鍋g。

鍋にめり込む信号弾が眩くひかる。

そして鍋を片手に空を弧を描いて飛行する俺。これは飛ぶというより跳ぶかもしれない。

信号弾の特性ゆえ飛行した後には白い煙が出る。スモークである。

信号弾のスモークは非常にいらない。

何故ならゲームにおい雨、水、霧、煙の四つは重くなる原因だからだ。

空へと跳び上がって16秒効果時間が消え最後に信号弾は比べ物にならないくらいの眩い光を放ち爆発する。

#%_鍋gはバグっているので耐久性なぞ超越している。

このゲームにおいてもともと耐久性が存在するアイテムは爆発攻撃による弱点が存在し鍋で受けようものなら一撃で破壊され自身もダメージを食らう……はずである。

だが、壊れないし喰らわない。

ただただ、爆発によるノックバックはありとあらゆる手段を投じても回避不能のの為甘んじて受け入れる。

というか、信号弾による飛行においての魅力はこのノックバックである。

何故か知らないが一定以上の高度、つまり運営側は想定していなかった高度に達すると重力が弱くなるのだ。

おそらく物理演算のシステムがイかれているのだろう。

そしてその空間でノックバックを受けることにより加速。



俺はあっという間に森を抜けることが出来た。

そしてフィールドを隔てる透明の壁にぶつかりそのまま落下した。



ーーーうぁぁぁぁぁぁあああああ!!



声が同じなのは制作時の雑な使い回しと制作時間短縮の酷い手抜きのせいであろう。

そしてこの野太い声の音源は本当に野○先輩かもしれない……。











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