シネマニアックエクスプレス

白浜維詠

第1話 乗務員の沈黙

ここは、かなりマニアックな映画好き乗務員がタダ働きする寝台特急、シネマニアックエクスプレス。


今夜もどこへ向かうのか分からない初老の紳士が1人車窓の光景を見つめる…


乗務員白浜

「えー、おせんにキャラメル、いかがっすか~?」


???

「こんばんは、白浜くん。風邪の具合は如何かね?」


乗務員

「陀羅尼助丸飲んだから明日には治ってるっしょー、レクター博士」


レクター博士

(羊たちの沈黙に登場。世界一の精神科医だが食嗜好がアレで逃亡の身)


「相変わらず和漢方が好きだねえ。さて、君は取材のためなら現地へ赴く主義…というか。行かずにはいられない衝動に駆られている」


乗務員


「私を浅見光彦みたく言わんでくださいよ」



レクター博士


「…黒い翼の夢はまだ見るのかね?和歌山の、どこに惹かれる?」


乗務員


「中上健次さんの小説が好きだからです」


レクター博士


「セリフが棒読みだね…私に嘘は通用しないよ。ずばり、熊野の伝承にハートわしづかみにされてるからだろう?」



乗務員


「黙秘権を行使します」


レクター博士


「なかなかずぶといメンタルに成長したではないか。

いいかね?

君が陀羅尼助丸を常飲するのは観光地に行くと胃痛がするから?


元々胃弱だから?違うね、奈良時代のトリックスター役行者さまと一体になりたい『萌え』なんだろ?」



乗務員


「くっ…」


レクター博士


「いいかね?白浜くん。君の書きたい衝動に駆られる欲求は実は、自己承認欲求ではない。


もっと本質を見たまえ。己が内面を探れ、マルクス・アウレリウスの哲学書を読め」



乗務員


「うう…すいません博士、私が求めていたものは熊野の伝承に出てくる神々の、『飼い慣らされない原始的な強さ』を求めていましたぁ( ;∀;)」



レクター博士


「そうだ、周りに振り回されない、他に依存しない強い自分になりたい。それが君の欲求だよ。ところで」


乗務員


「なんですか?博士」



レクター博士


「私の手作りのお弁当食べるか?」



乗務員


「不穏な食材の持ち込みはご遠慮下さいまっせー。次はー京都嵐山ー。で、レクター博士あんたいつ日本に来るの?」


レクター博士


「それは、原作者次第だ」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る