余裕があるフリをする。
何ごとも、余裕がないとますますうまくいかない。余裕がなくいっぱいいっぱいだと、臨機応変な対応力がよけいに働かなくなる。
運転には瞬時の判断力、その判断に従う反射神経、そのとおりに実行できる運動神経が必要で、そういうものがスムーズにパパッと連携して働かなければ対処できない危ない場面が少なくない。
そういう対応力を発揮できるという自信と余裕がなければ、常にプレッシャーとストレスがかかって、体にも悪い。
余裕がないと、もっと単純なことができずに、もっと単純に困ることも多い。
最初のころの私は、余裕がないことで目線を近めの前方から動かせない、ハンドルから手を離せないという状態だったので、慣れたドライバーから見たらバカみたいな困りごとがいろいろあった。
そのうえ方向音痴なのにナビがなかったので、なおさらだ。
たとえば、初めての店に車で行く時。
キョロキョロできないので、店を探せない。店に気づいても時すでに遅く、通り過ぎざるを得ない。ぐるっと回って戻ろうとすると、特に都度の右折に全神経を持っていかれるので、何回曲がったかわからなくなって道に迷う。
たとえば、長時間の高速道路の運転で、喉が渇いてどうしても水を飲みたくなった場合。
ハンドルから手を離して、目で水の位置を確認して手を伸ばしてそれを取り、道路から目を離さずに飲まなくてはならない。なんとか水を手に持つことができたのだけど、その先、水を持ったままずっと固まってしまった。片手でハンドルを操りながら、目を道路から離さずに水を飲むということができない。かと言って、(ドアポケットの)ホルダーに戻すこともできない。取るより、戻す方が難しかった。
どこかがかゆくなってもかけない。エアコンの操作もできない。窓すら開け閉めできない。
これでは本当に困るし、慣れるまで待っていられない。運転がイヤになってしまいそうだ。
そこで私が考えたのは「余裕があるフリをする」ということだった。
かゆくないのに、ハンドルから手を離して顔をかいてみる。
何もないのに、わざと片手を離してみる。それができるようになったら、一瞬だけど両手を離してみる。
何も探してないのに、一瞬首を回して道の両脇の景色を見てみる。
もちろん、前方の安全を確認してから一瞬だけ。慣れてきたら、数秒に伸ばす。
いま振り返ると、そんなこと!?って思うけど、そんなレベルだった。
まさに、地道な「練習」。
そして、それはなかなか効果があった。
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