第17話 家政婦の裏の仕事
◇
調査は私の仕事の一つだ。
最初の仕事は、この町にある長田系列の会社のある人間を業者に調査させた。
その会社に届け物と称して訪れた時、経理の仕事を古くからしている事務員から相談を受けた。
会社の仕入先が片寄りだしたというのだ。
それで会社がいい方向にいくのなら別にかまわないが、そうでもないらしい。
運転資金のための借り入れ金が増えていき、同時に利息の支払いも大きくなっているということだ。
青木という男が仕入れ担当の課長に昇進してから、それがひどくなったらしい。
仕入れ担当の人間が業者から賄賂を受け取り仕入ルートなどを業者の都合のいいように融通させるのはよくある話だ。
生前、ヒルトマンさまは賄賂を非常に嫌っていた。
彼は賄賂というものが場合によっては会社を伸ばすことは十分に承知している。
だが昔、大きな賄賂で身を破滅させた同国人の存在を彼は知っていてその教訓から賄賂を決して受け取ることはなかったということだ。
青木という男に世間話で近づくと私と目を一度も合わせなかった。絵で書いたようにその目は泳いでいた。
私はグストフ氏の了解をもらい、この会社と青木の素行を調査させた。
報告書には青木が仕入先と内々に交わしていた不正な仕入れ価格の裏設定の内容が事細かに報告されていた。
また青木がギャンブルにお金を注ぎ込み大きな借金があることもわかった。
調査を全て鵜呑みにするわけにはいかないので会社関係の主要ポストにある人間の話も聞き照合させた。帳簿を調べる作業も依頼した。
グストフ氏は私からの話と報告書を併せて目を通すと、青木を解雇し、営業、経理の担当の入れ替え作業を行った。その時の仕入先はすぐに変更された。
この件以外でもこの会社の経理は杜撰だった。後でわかったことだが、それはヒルトマンさまが亡くなってからだった。
こんな調査・・業者を使うようなことをしなくても私にできることは多くあった。
近所の人からの情報、区役所での住民基本台帳の閲覧、市民の電話帳、地図・・色んな情報網を手繰り寄せれば業者を使わなくてもわかることがたくさんある。
私にはずっと知りたいこと、場所があった。
そう、ヒルトマンさまの前の妻、由希子さまの家だ。
彼女が今、どこで何をしているのかを知りたかった。
調べだすと彼女がどこに住んでいるかはすぐにわかった。
由希子さまはまだ神戸のご実家にいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます