第23話 15の災い。その7

「ねえねえ、ペリー。」

「なに? ちいちゃん。」

「神隠し、虐殺、巨人、ゾンビ、カラスの糞、ゴキブリ・・・じゃなかった、火事の災いって何なのかしら?」

「災いは、災いなんじゃないの?」

「ゴキブリは災いじゃなかったんだね。」

「不思議だね。ゴキブリは災いではないんだ。」

「何を言っている! ご先祖様が街に火を放って、ゴキブリを焼き殺してくれたのだ! やはり江戸の街は、徳川が作ったのだ! ワッハッハー!」

「でも、次の災いは、もう始まっているみたいよ。」

「楓が聞いたら、ショックで気絶して、口から泡を吹いて倒れちゃうわよ。」

「私が倒れる? どんな災いが起きたの?」

「米不足。」

「ギャアアア!?」

「ああー!? 楓ちゃんが口から泡を吹いて気絶してる!?」

「だから言ったのよ。楓には耐えることのできない災いだって。」

「疎開だ! 疎開して、米を食べよう!」

「あ、起きた。」

「楓の頭の中は食べることばかりね。」

「誰かのご先祖様が、街を焼き尽くすから、食料も燃え尽きてしまったのよ。」

「知るか!? 悪いにはご先祖様で、僕は悪くない! 無実だ!」

「ご先祖様の罪は、末裔も連帯責任だろうが。」

「桜先生!?」

 子供たちが騒いでいると、桜先生が教室にやって来た。 

「霊体の私はお腹は空かない。それでは、さようなら。」

「桜先生、さようなら。」

 子供たちは寺子屋から帰って行った。


「霊体って、いいな。お腹空かないんだ。」

「教会の倉庫に米がたくさんあるけど。」

「だから、ペリーのお父さんは何者なんだよ!?」

「困っている人に炊き出しなんかしたら、直ぐに倉庫が空っぽになっちゃう。」

「私も並ぶ。」

「楓は来るな!? 楓1人で備蓄米が尽きるわ。」

「そんな!? 腹八分にするから!? 許して!?」

「1人お茶碗1杯よ。平等にね。」

「死んだら恨んでやる!?」

「安心して。対悪霊用の銃弾もあるから。エヘッ。」

「かわい子ぶるな。」

「鬼だ!? ペリーは悪魔だ!? 日本を開国させる気か!?」

「既に開国してるわ。」

「こんな会話ばかりで、少年少女剣客隊は大丈夫なのか?」

「真面目に書いてダメなので、崩して面白く書くしかない。ワッハッハー!」

「そこ笑うとこか!?」

 こうして江戸の大火災のために起こった食料不足にも、元気に立ち向かう子供たちであった。


「あ、ご先祖様。」

 家々たちが家に帰ろうと通学路を歩いていると、泣いている家々のご先祖様がいた。

「どうしたんですか? ご先祖様。」

「私は家々のご先祖様で、徳川15将軍の一人、第14代将軍、徳川家茂である。実は、私がカッコよく災いを発表する前から、食糧難という災いが始まっていたんだ。私だってカッコよく、災いを明治にバラまきたかった。ゴキブリとか。」

「バラまかんでいい!?」

「ゴキブリのどこがカッコイイんだ!?」

「まったく家々のご先祖様たちに、ロクなご先祖様がいないな。だから徳川の江戸幕府は滅びたんだ。」

「その通り! ワッハッハー!」

「笑うな! 誰も褒めてない!」

「ウエーン!? 子供にいじめられた!?」

「誰もいじめてないだろうが!?」

「今の時代って、たった1コマを進めるだけで、これだけ話をおバカに膨らませないとウケないんだね。」

「まったく嫌な世の中だ。」

「おまえたちは本当に子供か!?」

「私たちは、少年少女剣客隊!」

「れっきとした子供です。」

「決めポーズも決まったね。」

「わ~い! やったー!」

 あくまで寺子屋に通う子供たちの物語である。

「もう、疲れた。帰る。家々、何か困ったことがあれば、ご先祖様たちに言いなさい。」

「ご先祖様たちに困っている。」

「え? ええー!? そうだったのか!? 知らなかった!?」

「知らなかったんですって。クスッ。」

「自分たちで15の災いをまき散らすとか言ってるのにね。クスッ。」

「ご先祖様をいじめるな!」

「先にいじめたのは、おまえだろう!」

「そうだったかな? ワッハッハー!」

「笑って誤魔化すな!」

「家々くんのご先祖様は悪くないよ。」

「お嬢ちゃん。」

「悪いのは、お腹が空くのが悪いんだよ。」

「お嬢ちゃん、お名前は?」

「楓。お腹空いたよ。」

「ありがとう。楓ちゃん。直ぐにお米が届くからね。さようなら。」

「家々くんのご先祖様、さようなら。」

 楓に癒されて消え去った家茂であった。

「おい! 配給だ! お米の配給が!」

「やったー! 楓のお米だ!」

「楓! あんたの米じゃない!」

「それにしても家々のご先祖様がいなくなったら、配給のお米が届くなんて、やっぱり家々のご先祖様って、災いなのよね。」

「その通り! 僕のご先祖様は災いなのだ! ワッハッハー!」

「自慢すな!」

 こうして無事に15の災いの、その7を解決した少年少女剣客隊だった。

 つづく。

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