第2話 : 続・神隠し [前編]

第2話 : 姉妹 ( 1 )




「パンツどこ~」



 風呂のドアから廊下ロウカ沿ソって、顔をチョコンと突き出す。


「 そこの脱衣所にしてあるでしょう…?」


 キッチンで洗い物にイソガしい姉が答える。


「 違うよ~。


 これ、三枚、千円のほうじゃん …!!


 ここのにレースの着いたさぁ…


 上下、おソロいの下着だよぅ!!」


 今度は、と脚だけ出す。すると、濡れたままの肌から、玉のシズクが床へとこぼれ落ちる。 彼女は「ここの処にレースの着いた…」と鼠径部ソケイブに手刀を忙しく当てている。


「ああ … あれぇ!? さっき二階のベランダ

 に干したばっかりよぅ?」


 彼女のジェスチャーが見えている訳では無いが、姉の方は、それとなく思い当たった。



「あのセットのランジェリー、高かったんだよう!! ちゃんと、ネットに入れて洗ってくれたぁ~? 」


 普段から家事を手伝わない妹の指示を仰ぎ、声を荒げる。


「そんなに大事な物だったら、自分の物くらい、自分で洗濯しなさいよっ!!」


 これは、やぶ蛇だったと、彼女は首をスクめた。


「ネェ~。 姉ちゃぁん!! お願いだから、取って来てよぅ!!あたし今、裸だし、代えの下着持ってこなかったのよぅ!!」


 今晩の食事の支度と、明日の、お弁当の用意をカネねた姉は忙しい。


「いつもの、下着でいいじゃないのう!可愛

 いちゃんのが、そこに干してあるでしょう?」


 いつもなら、これで良い。 女子校の友達には、キティーちゃん派が多い中、私は、数少ないマイメロ信者だ。


 だが、今日はいけない。あの下着で無くてはならないのだ。 こんな子供っぽい下着では、タダでさえ普段から、オコチャマアツカいされているのに、このマイメロ下着では拍車をかけてイジられてしまう。


 しかし、何より違うのは、自分の気持ちである。


 あのチョッピリ、セクシーな下着は、私を少しだけ大人の女性に近づけてくれる。 不思議に態度も、言葉遣いも変わるのだ。


 ″ ″の効用とは、こう言う事なのであろう。


 仮にも″勝負″とメイされる以上、如何イカなる闘いであっても勝たねばならぬ。 万全の準備を固め、自分に言い訳を許さない為にも、考えうる全ての″負けの要素″を排除しなくてはならない。


 では負ける …


 目標側が思いもよらぬ戦術で挑まなければ、劣勢の我に勝ち目は無いのだ。 彼女は、二階のベランダに突入する決意を固める。


「秋葉聖神女学園 二年B組 吉永リコ!!


 ただ今より″勝負下着 奪還作戦ダッカンサクセン″を遂行スイコウいたします!!」


 と、脱衣所の鏡の中に裸体をサラし、勇ましく敬礼してみせた。





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