第108話
秋はクラシックレースの最終戦がある。まきなはミラクルフォースで牝馬クラシックのGⅠ、秋華賞に出走予定だ。前哨戦はGⅡのローズステークスで2着と健闘している。
だが、注目は断然、牡馬クラシックの菊花賞に集まった。春の桜花賞とオークス、2冠を取ったブーケトスガール陣営が菊花賞への出走を断言。スーパーファントムに挑戦状を叩きつけたのだ。元々、長距離適正はマンハッタンカフェなどを親族に持つ彼女が有利と見られ、ファンの支持もむしろ牝馬チャンピオンに集まりつつあった。
「マジで…来おった…」
武豊尊は冷や汗を流す。煽りはしたが、本当に来られたら困る。スーパーファントムは今の小粒な牡馬勢が相手なら、菊花賞に距離不安があってもなんとかできる。しかし、ブーケトスガールは別だ。馬の力は下手すればあちらの方が上で、来て貰っては困る。
「ヤバい…ヤバいで…」
尊はなんとかしてブーケトスガールを封じ込めるべく、それはもう必死に作戦を練るのだった。吐いた唾は吞めぬのだ。
まず最初に迎えたのは秋華賞。桜舞う桜花賞から、いや、生まれた瞬間から歩んできた
今日は最強を誇る女王ブーケトスガールがいない。女王不在の中で支持されたのは騎手だった。つまり、武豊莉里子のファントムレディだ。1番人気に支持されたこのコンビ、春は桜花賞2着にオークスは距離にも泣いて5着。スーパーファントムの近親で、1600~2000mの中距離が向くとされている。
《どうですか、岡田さん?ファントムレディは?》
《いいねえ、仕上げは大丈夫。騎手は大舞台で安定する武豊姪や。複勝は、間違いなかろう》
《「複勝は、」ですか?》
《火浦君のコーラルリーフ、彼女も悪くない。鞍上も最近、何か掴んどるしな》
火浦光成は夏の新潟リーディングジョッキーに輝いていた。2年目の騎手が夏限定、主流から外れた新潟開催とはいえトップをとるなど、前代未聞だった。
《岡田さん注目は火浦騎手ですか!》
《あと、若手といえば御蔵も注目やろうな。乗っとる馬が良い。調教ではかっとんどった。出来すぎや》
唐橋弥刀を背にしたミラクルフォースは5日前、栗東坂路において走破タイム最速、いわゆる一番時計を計測していた。
《そうだったんですね!?東西の若手がぶつかり合う秋華賞!いよいよ発走です!》
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