風雲!国際重賞競走

第50話

 11月はGⅠラッシュだ。1週目こそ重賞のみだが、2週目から、エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップ、ジャパンカップと続いていく。ジャパンカップは日本最高額の賞金を誇る。昔は、欧米のみならず、世界中から出走馬を募ったが、今は来なくなって久しい。

 そんな中で、大ニュースがあった。今年の凱旋門賞をクビ差2着したベイカーランと、3着のカットルックヘアーマンが出走を表明した。カナダからもGⅠ馬スノーベアを出すという。それに応え、カタール王族・ウサム殿下が世界中を転戦させている実力馬のジャミトンの次走を、ジャパンカップに決めたという。

 フランス、イギリス、カナダにカタール(南アフリカ調教馬)。これだけの陣容が集まるのは久々だった。JRAの職員が営業を頑張ったのもあるが、キングジョージで佐藤が健闘し、凱旋門賞をジャミトンに騎乗した武豊尊が制覇したことで、日本競馬のイメージが飛躍的に向上したのだ。


 それだけの揃い踏みを見せたジャパンカップに今年のダービー馬クゥエルで出走する佐藤。その実家に、来客があった。

「慶太郎サン!」

「え、ジャンヌ!」

「俺もいるんだわ」

「先生まで!?」

 ベイカーラン陣営の二人だ。千葉市内の佐藤の実家を訪ねて来たという。

「まあまあ、お若いのに、獣医さんで調教師先生なんですか」

「ぇえ、来年一年、佐藤くんを預かるから、ご挨拶に、と」

 佐藤の母、雅代に挨拶に来たらしい。ジャンヌはというと、

「慶太郎サン、ショウブデス」

「え…!?」

「sirギリアムから、ベイカーラン、二、ノルヨウ二、イワレマシタ」

「そうか」

 ジャンヌは佐藤が帰ってから、今までに20勝を挙げていた。

「ライネンニハ、ベイはハンショク、ニ、アガリマス」

「そうだろうな」

「ダカラ、ゼッタイ、カチマス」

 ジャンヌは、力強く、佐藤の目をじっと見つめていた。

「アイテガ、ローランでも、慶太郎サンデモ」

 勝つ、と目も言っている。

「わかった」

 佐藤も、胸を張って言った。


「日本のチャンピオンが、きっちり負かしてやるよ!」

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