一〇 朱理の部屋

「姉さん、もうすぐおじさんが来るから……」


 の声が聞こえた。


 だいじょうぶよ、と微笑ほほえんで言おうとしたが口が回らず、表情も変えることができない。


 全身が熱い、特に背中の傷が焼けるようだ。


 仰向けになることができず、御堂刹那はうつ伏せで朱理が使っている二段ベッドの下に寝ていた。


 梵天丸を連れて行けないので一度稲本団地に戻り、永遠のお祖母さんがこんにしていた塩田診療所へ傷を診てもらいに行くつもりだった。


 ところが着替えようとしたところで目眩を覚え、真言で和らいでいた背中の傷が痛みをぶり返して身体が急激にっていった。


 歩くことはおろか立っていることすらできなくなり、それに気が付いた永遠が何とかベッドに運んでくれたのだ。


  なんだろう……何かがあたしに覆い被さって……浸透してくる……


「姉さん、しっかり! 意識を失っちゃダメッ!」


  そんなムチャ言わないでよ……


「お願いッ、眼を開けて! わたしを見てッ!」


 妹の必死の声に力を振りしぼってわずかにぶたを持ち上げる。


 眼の前に青ざめた永遠の顔があった。


「姉さん、おじさんが来るまで負けないで!」


  負けないでって……言われても……


 目蓋が重くなり意識が闇に飲まれ、再び何かが浸透してくる。


「姉さん!」


  永遠……

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