第69話 魔王 4

 ペースを落としたことで大きく遅れたが、魔王城と思われる城に辿り付いた。


「なんか不気味ですね」


 レイは魔王城を見てそんな感想をこぼした。


「そうだな。なんか薄暗いし、古びているのもそれを際立たせているよな」


「そうですね。それに何か嫌な感じもしますね」


「ああ、これ以上は近づきたくないな」


 エクスは魔王城を見たことで目的はもう達成された感じた。


 それはエクスたちの目的は魔王が復活しているかの確認だからだ。魔王城には立ち入ってまで魔王の姿を確認する必要はなかった。それは魔王城に近づいたからこそわかった。遠くからでもわかる程、強者の気配を感じたからだ。それは今まで戦ってきた魔物には感じることのなかった感覚であった。その気配の正体は魔王であるとしか考えられなかった。だから離れていても危険だとわかる魔王城にわざわざ入る必要なんてないのだ。


 それに魔王が復活したと報告して、もし魔王が復活してなかったとしても責められるようなことはないと思う。


 そう考えたエクスは帰る用意を進めるため、レイとエシルにその旨を伝えようとした。


「なあ、2人とも——」


「ねえ、魔王城の中覗いてみない?」


 ただ、それに被せるようにレイがそんなことを言い出した。


「レイ?!何言ってんのよ!この気配がわからないの!」


 エシルはレイの言い出したことが理解できず、声を荒げながらそう言った。


「何?もしかしてここまで来てビビったの?少し覗いてみることすら怖いの?」


 レイはエシルを煽るようにそう言った。レイは恐怖よりも好奇心の方が勝ってしまったようだった。今まで感じたことのない気配を感じ、その正体が知りたくなったようだった。そのためエシルを煽り、魔王城に向かうように仕向けた。


「そんなわけないでしょ!お兄様がいれば問題ありません。お兄様が魔王に負けるなんてことありえませんから!」


 そうなってはエクスでも止めることはできなかった。


 煽られたエシルはどんどんと魔王城の方へ向かって進んで行った。それを追うようにレイとエクスが続いた。


「まあ、なんとかなるか」


 それにエクスも自分の力に過信していたため、そう呟き、少しだけ魔王城を覗いてみることを認め、魔王城に向かった。

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