焦り

「はあっ……はあっ……」

 夜道を駆ける。足がもみくちゃになって、転びそうになってもなお駆け続ける。

 脂汗が滲む。

決して振り返ってはいけない。アレに捕まること、それは死を意味する。

 怖くて仕方がなかった。なんで自分がこんな目に合わなければいけないのか。恐怖の涙はすでに枯れきった。

走る。走る。走り続ける。

 足の感覚はすでにない。足が悲鳴を上げて、いずれ動かなくなるその時までずっと、暗闇の中、無我夢中に走り続けた。

 もうだめだ。限界が来た。

アレに食われる。

 ふと振り返り見たソレは、ギザギザした歯を持った大きくて真っ黒な怪物だった。口の間からはぼたぼたと血が滴っている。

 その口が僕を頭からゴキリと音を立てて食べた。

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