第6話≪カイの章≫【scapegoate】 —幻夢-

邪魔しないで…

あなたとわたしの間には

みえない境界線があるの…


…境界線…?


少し成長したキミの黒髪のストレートヘアと清楚なワンピースは風でさらさら舞い落ちる落ち葉と一緒に子犬のワルツを踊る。



そう。境界線。

自他を明確に分けるもの、自分自身を守るもの。

自分以外の誰もこの境界線の中には入れないの…


僕は手を伸ばしてキミに触れてみようとしてみる。


鬼さんこ~ちらっ


後ろを振り返ると瑠璃色七色プリズムに光る大粒の滴がくるりくるり白の雨傘を万華鏡のようにゆっくりまわすキミ。にっこり柔らかく微笑んで僕をみつめてる。


雨で濡れちゃうよ


僕は雨宿りできる場所がないか辺りを見渡す。地面に根をしっかりはった神木が目に飛び込む。僕は慌てて幹に走る。雨音のしとしとぽたぽたという静寂なメロディに重なる、巨木の何億年の悠久の太古の息吹が聴こえる。


神木に巻かれた白いしめ縄をなぞりながら、キミはあどけない顔で僕にこういう。


世界からもし何かが消えたらのお話しをしようよ。


何か?


うん。じゃあ…キミがなにか一つ消してしまいたいものはなぁに?


好奇心となにか心をくすぐるまっすぐで吸い込まれそうな純潔なキミの瞳には、どう答えればいいのかわからない僕の姿が映っている。


…一つだけ?


うん。ひとつだけ。

これはね、キミのいる世界を変えてしまうチャンスだよ。


人差し指を唇にあてながら、優しく目じりを下げたキミはすこし首を傾け微笑んで片目をつむってウィンク。


世界を変える…僕が…


そ。一つだけ消すの。でも消してしまったら二度と消したものはキミのいる世界に戻ってこないし、キミの記憶からもデリートされちゃうわ。


しとしと…ぽたぽた…


時が止まった時空の中小雨の中神木で僕をまっすぐ見据えるキミ。


急に言われても思いつかないよ…


困り顔の僕を背丈の低いキミは下から覗き込んでこういう。


——Why?


あぁ、まただ。

終わりのない夢【dream】。

時空はキミという時計仕掛けの天使だよ。

loop…loop…loop…

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