QUATTORDICI *エリザベス視点*
お茶会の当日、詳しい事は教えていただけなかったけど、エドがわたくしの部屋に来たいという。 よほどの事がない限り女子寮に殿方が入るのは難しいけれど‥‥ わたくしはしばらく思索し、ついには了承したのですが‥‥ どうするつもりなのかしら? いつも思慮深いエドが何もなくそんな事を言い出すはずもないですし、お任せしても大丈夫ですわよね。
「リズ、ワタシよ、ワタシ! 中に入れて頂戴!」
部屋の前で声を潜めてわたくしを呼ぶエドを迎え入れようとしてドアを開けると、髪で顔を隠し、侍女服に身を包んだエドが立っていました。 一体何処で調達したのかしら? そう考えている間にエドは素早く部屋に入り「ちょっと書斎借りるわね。」と言って書斎に暫く篭ってしまったわ。 30分くらい開かなかった書斎のドアが開くと、見た事もない女性が立っていたのです。
ゆるく結い上げた銀糸の髪、背が高くメリハリの効いた肢体、それを生かして美しく見せる為の薄いグリーンの柔らかな生地で出来たマーメイドラインのドレス、長い睫毛に彩られたグリーントパーズの瞳、ぷっくりと艶々な唇、恐ろしい程美しく、完璧な貴婦人がそこに居たわ‥‥。 もしかしなくてもこの方は‥‥。
「え、エド‥‥? 本当にエドなんですの‥‥?」
「そうよ。 ふふ‥‥ すごいでしょ?」
「信じられない‥‥ どこから見ても完璧な淑女ですわ‥‥。」
わたくしそれに‥‥ とっても気になる事がありますの‥‥。
「あの、エド? ちょっと伺ってもいいかしら?」
「ん? いいわよ、なぁに?」
「その‥‥ どこから見ても女性に見えますが‥‥ えっと、その‥‥ む‥‥胸と‥‥」
わたくしが言いよどんでいるのを見て、察してくださったエドがそれはいい笑顔で答えてくれたんですが。
「あ、この胸とお尻が気になるのね? ふふ、これはね‥‥ 愛と夢が詰まってるのよっ。」
「あ‥‥ 愛と夢‥‥?」
「それ以上は教えられないわねぇ~ 企業秘密よっ」と言ってごまかされてしまいました‥‥。 愛と夢が詰まれば大きくなるのでしょうか? ‥‥今度詳しくエドに教えていただきましょう。
美しく着飾ったエドをぽ~っとした目で見ているわたくしと、いつにもまして機嫌よくニコニコしているエドの2人で連れ立ってお茶会の会場に移動している最中、エントランスに差し掛かった所にアイオス様がいらっしゃいました。
「ごきげんよう、アイオス様」
「やあ、エリザベス嬢。 何処か....」
あら、どうされたのかしら。 急に目を見開いたまま黙ってしまわれたわ。
「あ、あの.... エリザベス嬢.... この方は....?」
アイオス様の視線の先を見ると、エドが微笑んでました。 説明しようとしたところエドが手で遮り、わたくしの目の前に進み出て見事なカーテシーをしています。 ‥‥カーテシーなどする機会はほとんどないはずなのですが‥‥ エドはいつの間にマスターしたのでしょうか‥‥。
「お初におめもじ致します。 アイオス・フォン・ローズブレイド様。 わたくしはガーベラと申します。」
「レディ・ガーベラ‥‥」
エドがガーベラと偽りの名前を告げ、珍しくお顔を赤くされたアイオス様にくすりと笑って近づくと、耳元で(あら、分からないの? ワタシよ、ワ・タ・シ。 エドナーシュよ。 どお? どこから見ても貴族令嬢に見えるでしょ?)と自分の正体を明かすと、アイオス様のお顔が赤から青に、そしてまた赤にと忙しく変わり、(な、何がガーベラだよ! ちょっとでも見惚れた俺の純情を返せ!)と小声ですが言い合っているようです。 本当にこのお二人は仲がいいのですね。 わたくしが微笑みながらそう言うと「「違う、そうじゃない。」」とお二人が声をそろえて言うのです。 そんなところも仲がいいですわよね?
気が付けば周りにいる皆さまもこちらを注目しているようで、殿方が何人か話しかけたそうにこちらをちらちらとみているようですが、そろそろお茶会の会場に行かないと間に合わなくなってしまいます。
「エド、そろそろ行かないと時間がありませんわ。」
「そうね、それじゃアイオスまたね。」
アンジェリカ様の選んだ会場は学園内のカフェテリアの個室でした。 中に入ると早速アンジェリカ様が迎えに来られました。
「わぁ! エリザベス様本当に来てくださったんですね! どうぞこっちに来てくださいね! ‥‥あら? そちらはエリザベス様のお友達ですかー?」
「お初におめもじいたしますわ。 わたくしエリザベス様のまた従妹でガーベラと申します。」
「ガーベラ様ですね! 来てくれて嬉しいです! アンジェリカです。 アンジェって呼んでくださいね! ガーベラ様本当にスタイルが良くてまるでモデルさんみたいですねぇ~。」
ニコニコしながら歓迎してくれるアンジェリカ様が席に案内してくださいました。 エドは一瞬目つきが変わった気がしますが‥‥ 気のせいですね、きっと。 でもアンジェリカ様の仰ってた『もでる』とはなんでしょう?
テーブルにはすでに他の方もそろっているようで、わたくしたちの他に2人いらっしゃいました。 あまりお話したことはないですが、記憶にある貴族年鑑の絵姿を思い浮かべ、恐らく男爵家と子爵家のご令嬢だと思われます。
「それじゃみなさん揃ったので、始めましょうか!」
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エリザベスがボケ倒しました‥‥。 次回はお茶会編です。
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