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「はぁ…」とため息一つ。いつもニコニコと笑みを絶やさないお母様が珍しく沈んでいた。
「どうしたんですか? お母様。」
「最近ね… なんだか肌の調子が良くないの… ってエドに言ってもしょうがないわね…」
お母様の顔を見ると、全体的に乾燥してがさがさしてるように見えるわね。これじゃお化粧のノリも良くないはず…。
みなさまごきげんよう。エドナーシュは12歳になりました。
お肌の悩みは乙女の永遠の課題よね… 大体この世界のスキンケア事情が悪すぎるのよねぇ。
まったく…この世界に某スキンケアクリームの青い缶はないの!?
‥‥知ってるわよ、無いって。 ちょっと現実逃避しただけよ。 ほんとアレはコスパもいいし最高だったのにね。 作ればいいって? 無理よ、揃わない材料が多すぎるもの。
だけどね… ふふふふふ。この間見つけちゃったのよ!! 何って? シアバターよぉ♡ お父様が領地の南部に視察に行くのに連れてってもらった時、傷や日焼け、虫刺されの薬として売られていた
「お母様、僕がその悩み解決してあげますよ。」
「エ…エド?!」
「ちょっと待っててくださいね。」
そう言って自分の部屋へ戻って試作品として作って置いたシアバターとラベンダーウォーターを取ってきた。 元々お母様にあげようと思ってたしね。 じっけ… 試していただきたかったの。
「お待たせしました。 今夜使えば明日には違いが分かると思いますが、これを…そうですね… とりあえず1週間使ってみてください。」
「これを使えばいいの?」
「ええ、フェイスマッサージもやるようにリエネッタとマリベルにも言っておいてください。」
リエネッタとマリベルはお母様の専属侍女よ。
*************************
翌朝、まだ夢の中から覚醒しきれていない頃、突然絹を裂くような女性の叫び声が聞こえた。
「きゃああああああああああああ!!!! なにこれええええ!!!」
「っ!?」
飛び起きたわよ… 心臓に悪い。(バクバクいってるって!) そしたら部屋の扉が壊れる勢いで開けられたわ。
「エドっ!エドっ!? すごいわよこれ!どうなってるの?!」
うん、わかった、わかったから首絞めないでお母様…
「肌が… 肌が…っ もちもちするのおおおお!!! すごいわあああ!」
分かったから両手を肩に置いてがっくんがっくん揺らすのやめてっ! 死ぬっ、死ぬから! また転生しちゃうからああ!
「う、げふぉ… お、お母様… お、落ちっ、落ち着いて…」
「ありがとう!エドっ!あなたを生んでよかった!!」
って泣きながら抱き着いてきたわ。 てか泣くほど!? 12歳になって、身長もお母様とそれほど変わらなくなったから(165cmくらい?)、危なげなく抱き留めてあげたけど。 それから落ち着かせるように背中をぽんぽんと叩いてあげた。
「真の美しさは一日にして成らずよ! がんばりましょう、お母様!」
「え… え、ええ がんばるわよっ…?(エドの話し方…こんなだったかしら?)」
―――――――――――― そしてあれから一か月。 まさかこんな事になろうとは…
「えーと、ワタシの作ったクリームと化粧水を売り出すっておっしゃってます?」
あ、オネエ言葉はね、あれから屋敷中のみんなに知れ渡ってしまったし、こっちのが楽だから家では使う事にしたのよ。 お父様もお母様も最初だけびっくりしてたけど、すぐ「まあいいんじゃない?」って。 基本的にそう言う家族間の事は細かい事気にしない人達だから。 もちろん外では公爵家嫡男として完璧な振る舞いをしてるわよ。
「そうなんだよ~。ほらソフィアの美しさがエドのおかげで大変な事になっただろ~?」
お父様が嬉しそうに肩を抱き寄せるのは、ワタシと同じプラチナブロンドの髪を持ち、輝くばかりの美貌をした婦人、ワタシのお母様よ。 お母様はお父様に褒められ、頬を赤く染めて恥ずかしそうにしているわ。 ほんとこの二人はいつまで経ってもラブラブよねぇ。
「私もあれから何度かお茶会に参加したのだけど、もうご婦人方がものすごい食いつきで、一体何をしたのかってそれはもう質問攻めにあってしまって。」
にこにこと、ものすごくいい笑顔で「だからね、エド。これは売りだそうよ~。いや、売らなきゃいけないよ。 機を見るに敏と言うだろう~?」と力説するお父様。
ああ、うん、それ日本の言葉よね。まあ日本の乙女ゲーの世界だからいいのかしらね。 知らんけど。
「まあいいんですケド。 でもワタシ一人で作ってるからそんなに数はご用意できませんよ?」
「ふふふ~。そこはこのお父様が抜かりなくやってるから心配しなくていいよ~。」
どうやらもうすでに人手の手配と作業場の確保に動いてるらしいわ… さすが家ではゆるーい感じでも、宰相として敏腕と言われるだけあるわね…
そんな感じでワタシのスキンケアプライベートブランドの『ペルフェーナ』が誕生した。
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