第43話 再会に、異世界へ
蓮人達は獣人族の人について歩いて行く。
(そういえば、名乗ってもないし、名前も聞いてなかったな)
それを思い出した蓮人は自己紹介をすることにした。
「あの、まだ自己紹介してなかったんですけど、俺は蓮人です」
「私はリーです。よろしくお願いします!」
「そういや、俺も名乗ってなかったな。俺は獣人族のタロと言う。よろしくな!」
なんでも、タロは人族に会うのは初めてらしい。
「人族は増え過ぎちまったからな。この世界の覇者は自分達だと思ってんじゃねえか? そんなところに俺たち神人族と言われている伝説の部族が現れてきてみろ。えらい騒動になると思わないか?」
蓮人はその説明にやけに納得してしまった。
人間とはどこの世界でも、自分とは異質なものを受け入れられない存在らしい。なんとも悲しいが実際その通りなので、蓮人はタロに否定の言葉を返すことが出来ず、なぜか謝ってしまうのだった。
「なんで蓮人が謝んだい? 女神様がそうお造りになられたんだ。俺たちにゃなんの文句もねえよ」
なんだかすごく申し訳ない気がしてしまう。これは日本人の性なのだろうか。
そんなことを考えながらタロの後ろをついて歩いていくと、ポチが驚きの声を上げた。
しかし、蓮人とリーには何も見えない。
「ポチちゃん、何か見えているのですか? 私と蓮人さんには何も見えていないのですが」
「目の前にガサラの門と変わんないくらい大きな門があるよ! 見えてないの?」
蓮人とリーは目を凝らすが何も見えない。タロは忘れてたという風に蓮人達の方に顔を向けて
「そうだったそうだった。獣人族以外は見えない結界を張ってるんだった。確かあっちにいけば解除出来たはずだ。ちょっと待ってな」
そう言い残してタロは草の茂みを掻き分け進んでいく。そして姿が見えなくなった頃、カチッと音がしたかと思うと、ドーム状の幕のような何かがすっと薄くなって消えていき、目の前には先程までは無かった大きな門があるのだった。
その門のあまりの大きさに蓮人とリーは声を上げてしまった。
「で、でかい……!」
「なんならガサラの門よりも大きいかもしれないですね……」
「そんなこたあいいから、早く入ってくれや」
タロはもう門を開けて中に入っており、手招きしている。それに従って蓮人とリーも続いて中に入ったのだが、ポチはいっこうに歩き出さずにずっと下を向いている。かなり緊張しているようだ。
(まあ、ポチは記憶が無くなって親のこと分からないんだもんな。あれだけ楽しみにしてたって、いざ会えるとなってもそりゃあ緊張するよなあ)
蓮人とリーはそんなポチの背を押してやる。
「ほら、あれだけ楽しみにしてたじゃないか。もう目の前まで来てるんだぜ? 胸張って強くなって帰ってきたぞってとこ見せてやれよ!」
「そうですよ! お母さんやお父さん達もポチちゃんが帰ってきたら絶対喜びますしね!」
「仕方ないな。ほら、行くぞ!」
そう言って蓮人はポチを担ぎ上げて肩に乗せてやる。いわゆる肩車だ。
担ぎ上げられてすぐは戸惑っていたが、すぐにいつもとは違う景色に興奮して元気になっていた。どうやら緊張は解れたようだ。
そんなこんなしている間、蓮人達の周りには獣人族が集まっていたのだが、その人達にタロは大きな声で説明してくれていた。
おかげで行く人行く人にお礼を言われる始末だ。
(人族だからって追い返されなくて本当に良かったな……)
そんなことを思いながら村の中を、タロを先頭にして歩いて行く。
「着いたぞ」
ある家の前でタロさんは足を止めた。その言葉を聞いた蓮人は無言で肩車しているポチを下ろす。ポチは素直に下りたのだが、まだ扉を開ける勇気はないようだ。
(やっぱ、まだまだ小さい子供なんだよな。仕方ないか)
「なあ、ポチ。俺とリーは、お前を無事に送り届けるって約束守ったぜ?
だからさ、最後に俺達にポチのカッコイイところ見せてくれよ。俺たちの仲間のポチはこんなにカッコイイやつだったんだって街の皆に自慢出来るようにさ」
蓮人はそう言ってポチの頭をガシガシ撫でてやる。
ポチは涙を堪えているが、なんとか耐えた。
「よし、おいら頑張るぞ!」
ポチは1度深く深呼吸してそのまま扉を開けて中に入った。
中には獣人族の男と女の2人がいて、扉を開けた人をじっと見ている。
「ポチなのか……?」
男はいないはずの人が目の前にいることを信じられていないようだ。女の方は涙が零れ落ちている。
「そうだよ。お父さんとお母さん……?」
「ああ、そうだぞ……。ポチのお父さんとお母さんだ……」
ポチも、ポチのお父さんもお母さんも声が震えている。
「お父さん、お母さん……!」
そう言ってポチは2人に向かって駆け、飛び込んだ。
ポチは大号泣している。
そんな家族の再会を蓮人とリーは嬉しそうに、寂しそうに眺めているのだった。
(ポチ、カッコよかったぜ)
家族3人の泣き声が夕暮れの空に響き渡るのだった。
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