第23話 ポチの実力を測りに、異世界へ

 翌日、日が完全に登りきる前に3人の姿はギルドの依頼掲示板の前にあった。


「さて、今日はポチがどれくらい戦えるのかを確認するためにも、ゴブリンとオークの討伐れん依頼を受けてみようと思うがどうだ?」


 蓮人がリーとポチにそう提案する。


「ええ、それがいいと思います」


「おいらは任せるぞ」


 とのことなので、今日はその2つの依頼を受けることになる。

 レノに早速手続きをしてもらい、3人は早速出発する。ギルドを出た頃、朝日が昇りこの街も活動を始めていた。








 「ポチ、ゴブリンは動きも遅いし知能も低いから、大した敵ではない。初めての討伐依頼にはピッタリの相手だ。けど群れられると厄介だから1体ずつ確実に減らしていくんだぞ!」


「大丈夫です、あまり緊張せずに自分の出来ることをしてください。ダメならダメで私達がいるので安心してください!」


 蓮人とリーはそうポチにアドバイスをする。ポチはやる気満々で、少し離れた所にいる5匹のゴブリンを狙い、様子をじっくりと伺っている。その集中はとんでもないもので、決して油断などはせず、全力で倒しにかかっている。その様子を見て蓮人はポチの技量はかなりのものであると予想するのだった。リーは緊張していると勘違いしているみたいだが。


 そしてポチは一息ついた瞬間、ナイフを抜いてゴブリンに向かって走り出す。踏み込んだ次の瞬間にはもうトップスピードに達しており、蓮人がギリギリ目で追える速さであった。


「え! は、速いです!」


 リーはポチがいつ危なくなっても大丈夫なように魔法を放つ準備をしていたので、予想に反したポチの動きに驚きを隠せない。


 ポチはトップスピードのままゴブリン1体の横を駆け抜け、その際にナイフでゴブリンの喉元を斬っている。とんでもない技術だ。そのままの勢いで残りの4体にも同じように一寸の狂いもなく喉元を斬る。全てが一刀の下で終わっており、あまりの太刀筋にゴブリン達は自分達がどう殺されたのかも分からないまま死んでいっただろう。

 そしてポチがゴブリンから少し距離をとり油断なく構える。その瞬間、ゴブリンは喉元から一斉に血を吹き出しながらそのまま倒れていく。勝負は決まったようだ。

 しかも、これだけの動きをして息を切らすことすらしていない。蓮人は予想を遥かに上回るポチの技量に舌を巻く。


 (これは動きは俺よりも上だな。なんならこの前のギルドマスターのような洗練された動きだったぞ……)


 リーに至ってはポチが強いという予想もしていなかっただけに、驚きは蓮人と比べても数段上である。まさしく空いた口が塞がらず、今何が起こったのか全く理解出来ていないようだ。


「あの、蓮人さん何か手伝いましたよね?」


「いや、何もしてないぞ。あれがポチの本当の強さってわけだ」


 蓮人が手伝ったからあんなに凄いんだと思い込んだリーはそんな見当違いなことを尋ねるが、即答で否定されリーは何が何だかよく分からないという顔をしている。

 そんな中、ポチは褒めてくれとばかりに目をキラキラさせて蓮人を見ている。


「凄かったぞ、ポチ。体捌きでいえば俺よりも全然上だったよ」


 蓮人はそう褒めてやる。褒められたポチはわーいわーいとはしゃいでいる。やっぱりそういうところはまだまだ子供のようである。


「そうですね、本当に凄かったです。私は目で追うのが精いっぱいでしたもん」


 我に返ってきたリーもポチを褒めてやる。するともっと喜びだすのだった。見ているととってもほっこりとする。


「ところで、なんでそんなに動けるんだ? 誰かに教えて貰ったのか?」


 ポチの動きを見て疑問に思っていたことを蓮人は尋ねた。リーもうんうんと頷いていて興味津々である。

  尋ねられたポチははしゃいでいた動きを止めて、頭を抱えて考えている。うーんうーんという声が聞こえてきそうである。

 ポチはいきなり清々しい顔をして立ち上がったので、蓮人は思い出したのかと期待していると


「忘れた!」


 二っと笑ってそう言うのだった。

その返事に新喜劇のようにズッコケそうになってしまった。危ない危ない。


「まあ、覚えていないならいいや。とりあえずポチは強いってことは分かったしな」


「うん! おいらは強いんだぞ!」


「ポチちゃん、強いのは確かだけど、油断はしちゃいけないよ!」


 調子に乗り出したポチをリーはきちんと注意する。

 はーいと素直に聞いてくれているので可愛いものである。


「よし、じゃあもうちょっと先に進んでオークの方に向かおうか」


「はい! 頑張りましょう!」


「頑張るぞー!」


 3人は気合い十分でオークの討伐に向かう。

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