・・・・

「占いだかなんだかで動物たちがどこにいるのか分かれば警察もいらないですよね」と、挑戦的に返された。さきほどのイメージはこの短時間に覆された。

「やめないか」園長にいなされ静かになったが、世間の反応はやはりこんなものかと湖は少し悲しくもなった。


 出雲大社がいたらきっと向井さんに次にそんなことが言えないくらいまで嫌みで応戦するんだろうけど、幸か不幸か湖にそのスキルは無い。横でキョロキョロと事務所の中に視線を走らせる白子は、まるで新居にやってきた猫そのものだ。人が言ったことなどまったく気にもしない。主のことをうっすらけなされたのに、我関せずといったところだ。

 今、この時点においてはその性格がすこぶる羨ましい。


「向井。私が無理を言って頼んで来て頂いたんだぞ。失礼じゃないか」

 眉根に川の字をこしらえた園長の視線を、細い目を更に細めて流した。

「悪く思わないでください。自分の担当の動物が次々いなくなってこいつも憤慨しとるんですわ。こいつなりにも警戒してたんです」

「それはそうと園長さん、知り合いの警察官だけには連絡をしたという話でしたが、しっかりとした届けはまだ出していないんですか?」

「はあ、ちょっといろいろありましてね」

 頭をかきながら視線を宙に泳がせた。


 何か隠してる。園長はまだ言っていないことがある。一体なんなんだろう。警察にも言えないことなのか。向井がダンボのように耳を大きくして湖たちの次のことばを待っている。

「で、ペリカンがどうしたわけ?」

 白子はきょろきょろしながらもペリカンのことを話してたわよねと向井に話を振った。

「そう、ペリカンのところの小屋の屋根が……」

 ペリカンの話を思い出したのか、ひとつ手を打って園長とペリカンの話をし始めた。


「白子さん、ナイス。それで、なんか感じ取れました? さっき何人かすれ違った従業員の中にはいそうに見えなかったんですけど」

「なんでよ」

「だって、みんな動物大好きーって顔してましたし、ニコニコしながら仕事してました。動物を盗むなんて人いないように思うんですけど」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る