・・

「わざわざ遠いところまでご足労、ほんとにありがとうございました。どうでしょう、園内一回りなさいますか?」

「はい、ぜ」「結構です。帰りが遅くなりますので」

湖の言葉を遮った白子に、

「そうですよね、勝手なことを申しました。すみません」

と木立は申し訳なさそうに謝った。そして、出雲大社のことを探すが、いないとわかると眉を八の字に下げた。


「いやいや、謝らないでください。私も白子さんも動物園の中を見たいんですが、その間にまた動物たちがさらわれるとも分かりませんし、そういうことなんです、はい」

 湖は慌てて白子の言ったことばをかきけした。


 木立は自分の動物園を紹介してくれようとしてくれたわけで、遠くからやってきたことに対してのお礼だったわけだ。それを白子はわかっていない。もともと動物なんだから仕方のないことだ。


「そうですね、こうしている間にも動物がいなくなるかもしれないですしね、それでは事務所の方へ。事務所の入り口はすぐなのでこちらから」

 湖たちは、爬虫類館と屋内休憩所の間を抜い、動物慰霊碑の前で一度頭を下げ、今度は左手にレッサーパンダを見ながら来た道を戻った。

 平日にも関わらず家族連れが目立っていた。

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