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例えば、身体的なこと、
平手で体を打ったり足で蹴ったり、身体を傷つけるような物で殴ったり、刃物などの凶器を使用したり、髪をひっぱる、引きずりまわす、首をしめるってのもこれに当たるわけ。
はい、これはね、刑法第二百四条傷害、第二百八条暴行に該当する違法な行為、たとえ配偶者間で行われたとしても処罰の対象になるわけですよ。
この他には精神的なものもあったりするよ。言わなくてもわかるだろうけど君の場合ちょっと分からなそうだから言っちゃうね。つまり言葉の暴力だ。肉体的な傷は時間とともにいくらか癒されるよね。でも精神的なものは時間がたってもなかなか癒されるものじゃない。そういうことを言うよ。
「頭の悪い君に分かるように簡単に言ってるんだけど、これで分からないとか言わないでよね」
出雲大社の口から滑らかに言葉が溢れてくる。
そしてその間は誰も口を挟むことができなかった。
無言で青ざめる田中はさきほどまでの威勢はどこへやら。急におとなしくなって目は泳いでいる。
「べつに、出るとこでてもいいんだけど、どうする? そうなるとまず仕事は辞めなきゃならないし、同じ業界にはいられないよね。噂ってあっという間に広まるじゃない?」
人の噂が流れるのは早い。それがその本人にとってマイナスな情報ならなおさらに早い。
「押し入れの中にあるビデオカメラと写真のフィルム、持ってくよ。花井さん、出してきて。場所わかるでしょ」
こくんと頷くと、安堵したような顔になった。きっとこのことも言いたくても言えなかったんだろう。
しかし、この期に及んでまだのたうちまわって押し入れを開けさせまいと邪魔する田中を見苦しく思い、ビデオ学習で学んだジャッキー仕込みの蹴りを背中にお見舞いして場所をあけた。
「君ってほんと女の子とは言いたくないよね」
「それなら出雲さんは男とは言い難いですよ」
「君は顔だけかと思ったら中身も失礼なんですねえ」
このクソ占い師は自分のことは棚上、しかも超高層タワーマンションの屋上に上げる。
ある意味ずぶとすぎるし、ある意味、強い。
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