第95話 コーヒーが飲みたい 4

「冗談よ、冗談。」


「( ̄ ̄ ̄ ̄□ ̄ ̄ ̄ ̄)チッ」


「相手はスレイマン一世。オスマン帝国の皇帝。しかも転生者。更に日本を侵略して日本人を蔑視し、女性を奴隷としか思わない中国人の生まれ変わり。ついでに、エリカを自分の大奥に連れて行きエリカを殺す原因を作った市長。但し、エリカがいた世界とは別のエリカの話だけど。」


「凄いな。なんかタイトルがいっぱいなやつだな。」


「問題は、未だスレイマンの能力が分からない事。」


「一つ分かっているのは、痺れさせるのに薬を使ったみたい。だとすれば、雷系の魔法は使えない可能性が高いという事。」


「このまま逃げれば良いんじゃないのか?」


 そんな事をされては帰蝶の目論見が崩れ去ってしまう。


「そ、それは無理。こんなに沢山の人じゃ転移できないぃ。」ありさは芝居が臭くなった。


「だったら一人ずつ転移すればいいんじゃないのか。」


 もうしつこいと思いながらも亜里沙はここで止めるわけにはいかない。


「ここに何かしらの力が働いてるみたいでここからは一人じゃないと転移できないのよね。魔道具かしら?」さらに臭い芝居を続ける亜里紗であった。


「そうなのか?」


「それに、スレイマンはエリカと、特にディルに興味津々で簡単に逃がすとは思えないし、逃げてもあの男は追い掛けて来るよ。」


「そうか、しかし相手も帝国、かなりの数の兵がいるんじゃないのか。」


「だから、攻撃能力を持つあなた達が必要なのよ。ほら、私は転移と重力魔法しか使えないからぁ。」尚も亜里沙の臭い芝居が続く。


「そうだな。お前は戦闘では役に立たないな。」


「だから、あなたが敵をやっつけてくれたら、私が移動できるようになると思うから(嘘ぉ!)」


「そうか、盧将軍、俺達でやっつけるか。」


「え~、二人でですか?大変じゃないですか?エリカさんも能力持ちなんですよね。何の能力使えるんですか。」


「私は、簡単な攻撃魔法が使えるわよ。」


「え、そうなの?神に貰ったヤツ?」亜里沙はエリカの能力を初めて知った。


「あれ、相手の能力がわかる能力は?」


「あれ消えた。攻撃魔法と引替だって。」エリカは残念そうだ。


「そうなんだ。残念だね。便利なのに。それで、ディルの能力は何?」亜里沙は目的に忠実だ。序を装ってなんとしてでも能力を暴こうと頑張る。


「わ、私の能力は教えられない。こ、皇帝からも止められてるしぃ。」


「おい!俺は止めた覚えはないぞ。たしかに教えたらまずい能力なら止めるが俺は未だお前がどんな能力持ってるのか知らないぞ。」


 ディルは、嘘がばれたことに顔が青くなっていた。しかし、それでもディルは綺麗だった。


「どういう事?ディル」亜里沙は詰め寄った。


「教えられないの。誰にも。」


「分かったよ。お前が教えたくなったら教えてくれ。」厚熜は優しかった。


「陛下、では二人で戦端を切りましょう。エリカさんは後衛で、援助して下さい。亜里沙さんは脱出要員。ディル様は見学という事で宜しくお願いします。さぁ行きますよ。」


「え?私見学?体育?」


「鍵溶かしますよ。七の剣『地獄の火炎』‼」


 盧将軍は剣を繰り出した。剣から強烈な炎が出て牢の鍵を扉まで溶かした。


「だったら、鍵溶かす必要ないんじゃないの?」ディルは冷たかった。


「盧将軍、落ち込まないで!」エリカが励ますが、まだ少々落ち込んでいる。


 牢のあるテントから出ると、既に外は騒がしくなっていた。兵が周りを取り囲んで来る。


「やれ、盧将軍。」


「御意。伍の剣『レーザー』!切れろ!胴体‼」


 剣の先からレーザーが出て剣の動きに合わせて離れた敵が切られていく。十名以上の兵が胴から上が切り離され絶命している。


「おー凄い!何それ!」亜里沙も驚いている。勿論威力にではなく剣の先から光が出ていることについてだが


「盧将軍。また来たぞ。」


「行け行けぇー。」亜里沙は盧将軍を囃し立てる。


「御意。三の剣『氷塊』行けぇ~!」


 剣の先から氷の塊が出て敵兵に当たっていく。ダメージはあるようだが、死ぬほどではない。数が少ない剣だと威力が弱いようだなと亜里沙は観察を続けていた。だから囃し立てる。


「おっ、凄~~い!盧将軍、素敵ぃ~!」


「よし、九の剣『落雷』避難しろぉー。」盧将軍は調子に乗っていた。


 轟音と共に落雷が敵兵に襲いかかる。

 盧将軍を更に調子に乗らせて剣の数字の内容をすべて知りたいが、皇帝は戦わないのか?


「あのぉ~、陛下?あなたは戦わないの?陛下のカッコいい所も見てみたいなぁー。」亜里沙は猫なで声でおねだりする。


「おれか?俺は攻撃魔法は使えないんだ。だからいつも盧将軍がいるんだ。でも、俺にはディメンションバリアーがあるからな。絶対負けないぞ。」


 何だ、只のはったり野郎か、と思ったが口に出しては言えない。まぁ、皇帝の防御力と、盧将軍の攻撃力があればほぼ無敵だな、でも私には敵わないかもと思う亜里沙であった。でも亜里沙は知らなかった。盧将軍にはさらなる数字の剣があることを。


「見ててくださ〰い。亜里沙さ〰ん。十の剣『クエーサー』!!」


 強烈な光が振った剣の先端から敵に向けて降り注いだ。敵は怪我もなくただ死んでいた。

 残った兵士は逃げ出す者や腰が引けている者、様々だが既に攻撃してこようとする者はいなかった。


 刹那、炎の塊が強烈な速度とともに盧将軍に向けて放たれた。


「六の剣『煉獄』‼」


 盧将軍は慌てることなく剣を放った。すると、炎の塊は最初からなかったかのように消えてしまった。


「盧将軍。どうなったの?」亜里沙が盧将軍に聞いた。戦いの最中でもお構いなしである。


「あれは煉獄に閉じ込めたんです。」


「煉獄?。」


「ただの異次元空間をそう呼んでるだけですよ。」


「帰蝶。盧将軍を戦いに集中させてやれ!」厚熜はいつまでも話を止めない亜梨沙をたしなめる。


「ごめん。でも、帰蝶はヤメて!」と言いながら亜里沙は情報収集に余念がなかった。


 再度、炎の塊が飛んできた。


 しかし、どこから飛んできているのかわからない。これではただ、防御するのに精一杯だ。


「三の剣『氷塊』」


 すると、炎が氷で相殺された。


「盧将軍、これじゃ何時まで経っても埒が明かないぞ。敵はどこにいるんだ。」


「わかりません。全くわかりません。もしかしたら、敵は夢の透明人間の能力ではないでしょうか。」


「そ、そんな羨ましい能力があるのか?じゃ、スレイマンは透明人間?」


「何をバカなことを言ってるの、男どもは。早く戦えよ。」戦っていない自分のことは棚に上げて男どもを責める亜里沙であった。


 攻撃の開始点が変わる。その為、攻撃した時点で、魔法が出現した場所を攻撃しないと敵には当たらない。


 亜里沙は厚熜らから少し離れて千奈に聞いた。


「千奈、敵の姿が見えないんだけど、レーダーで見える?」


『赤外線で場所はわかりますよ。ここからははっきり見えてます。移動しながら攻撃しています。』


「ねぇ、陛下ぁ、たとえ透明人間でも地図で見えるんじゃないの?」


「なんで地図持ってるって知ってるんだ?あー、信長に聞いたのか。お、いた。見えたぞ。走りながら攻撃してるぞ。そのうち疲れるんじゃないのか?皇帝自ら大変だな。お、動きが遅くなってきたぞ。」


「ねぇ、盧将軍、その辺り一帯を魔法で攻撃したら?」亜里沙は提案してみた。


「いえ、亜里沙さん。僕のは魔法ではないですよ。剣です。このヒヒイロカネの剣で攻撃しているだけです。その時に付与魔法の効果が出るわけです。」


「付与魔法にしては、沢山種類があるような。あなた自身が魔法を出しているんじゃないの。多分剣を変えてもできるんじゃないの。」


「どうでしょうか。」


「それ中国の青竜刀だよね。日本刀欲しくない?」


「でも、日本にはヒヒイロカネで造った日本刀はないと聞いたんですが。」


「それはそうよ。だって、ヒヒイロカネで造った剣は日本刀とは言わないらしいから。」


「そうなんですか?では有るんですか日本刀の形の剣といえば良いんでしょうか。」


「ヒヒイロカネの作り方をダーリンが見つけたから(実は神に聞いた、でも内緒。)ヒヒイロカネの日本刀(の形の剣)有るわよ。那古屋城に。」


「本当ですか?試してみたいです。」


「今度あげるわよ。」


「え、信長さんに聞かなくても良いんですか?」


「いいのよ。ダーリンのものは私のもの。私のものは私のものよ。」


「どこのガキ大将の理屈ですか?鬼嫁ですね。」


「そんな事言うとあげないわよ?」


「いえ、鬼嫁ではないです。本当に親切ですよね。ディルさんにも見習ってほしいですね。」


「あ”ー、な”ん”か”言った”ぁー?」ディルが地を出して怒った。


「おいお前ら、戦いの最中にない話し込んでるんだ?相手に休憩させてしまったじゃないか。」厚熜も怒った。


「盧将軍、広範囲殲滅でやっつけて。」亜里沙が無茶振りする。


「広範囲殲滅ですか?よ〰し、あったかな?よし。十一の剣『ブラックホール』‼」


 透明人間がいると思われるの周理の空間に小さな黒い丸が現れる。透明人間はその黒い丸の中へと吸い込まれていった。


「やった。敵がいなくなったぞ。」ワールドマップで確認した厚熜も大喜びだ。


「どうなったの?敵が見えないから何がなんだか・・・」


「今のは敵を亜空間に吸い込み別の場所に出現させる技ですよ〰、亜里沙さ〰ん。」


「殺してないのかよ!」皇帝は少々おかんむりだ。

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