第109話:疲れ

雨梨目線____

 数日前、ラボに行ったら言われたことがある。

「岩倉、白以外に敵がいるとしたらどうする?」

「それはすごく…厄介。味方につけるか、まだ力を持っていないのなら今のうちに潰しておくとか。」

「もしそうなった時に、1番使えるのは生物兵器だ。」

「それは…。」

「生物兵器は禁止されている。そう言いたいか?」

「はい。」

「もし禁止されなければどうなる?」

「…僕が作るということか?」

「あぁ、お前はたしかに機械と情報が1番得意だが、生物系も出来るだろ?」

「出来なくはない。ただ、生物兵器は…。」

「お前の倫理観に沿わないと?」

「僕はただ、生物兵器は収集を付けられる自信が無い。」

「収集?」

「生物兵器は味方も攻撃する。止めることは厳しい。」

「生物兵器はデメリットが大きいと?だが、そうでもしないと少なからず最初に消えるのは俺ら黒側だぞ?」

「消える…最初に…?」

「そうだ、いつか消えるかもしれないが、このままだと白でも赤でもない。黒、俺らなんだよ。…お前はなんで黒軍にいるんだ?」

「分からない。僕は求められたからここにいる。」

「じゃあ求められたら裏切る可能性もあると?」

「ない…とは断定できない。でも今はそうなることを想像できない。」

「そうか。まぁいい。もしもの時は出来るかどうかではなく、やるか死ぬかという選択しかなくなるだろうがな。ただ、ひとつだけ覚えておけ。お前の上司は騎馬兵団に居るかもしれないが、そんな内部の人事ぐらいなら変えられる力はこちらにあると。」

 要は人事を変えて僕を研究者として完全に組み込む。そうすれば上官は蒼桜先輩ではなく研究者の誰かになる。僕は従うしかない。

 ラボから出ると吐き気がした。んー。やっぱりずっと機械いじりばっかりしてると疲れるのかな。

「雨梨。」

「蒼桜先輩…。」

「ラボ帰り?って…どうした?」

 何が?蒼桜先輩がそっと覗き込んでくる。それが歪んで見えた。あれ?

「雨梨?」

「大丈夫です。少し疲れただけなので。」

「そっか。無理しないようにね。」

「ありがとうございます。」

 とりあえず寝よう。


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