第98話:誰のせい、俺のせい

蒼桜目線――

その日の昼過ぎに班長である俺だけが、凛音の病室に入ることが許された。

「凛音。」

「蒼桜にぃ。」

点滴…酸素マスク…心拍数の機械…そしてくすんだ目をした凛音。

「久しぶり。」と頭を撫でるとすこし安心したように表情が少しだけ緩む。俺が病室に入れた理由のひとつが聞き取りをするためだった。

「ダメだと思ったら止めますので。」

「先生、分かりました。しかし、こちらの指示の方が優先ですからね。」

そんな話を医者と何人かの先生がしている。

「四月一日。お前が一条家を飛び出した日、何があった。」

「あの日は…寝ててカチッて音で目を覚まして…っ!」

「凛音!?」

「大丈夫っ…。」

ぎゅっと腕を掴んで震える凛音の背中を撫でる。

「それで、猫音さんに撃たれてっ…。」

だんだん呼吸が浅くなる。

「これ以上は…!」

「いや、四月一日続けろ。」

「先生…!もう後は後日でいいじゃないですか!」

「神咲は黙ってろ。四月一日続けて。」

「また撃たれそうで…拳銃奪おうとしたら…。」

「発砲していたと?」

「でもっ…私っ…トリガー触ってないですっ…!やってない…です…!!」

「凛音、わかったよ。大丈夫。凛音がそんなことしないのは分かってるから。」

「流石にこれ以上は医師として止めさせていただきます。」

無理やり止めに入った医師によって中断された。

「怖い…蒼桜にい…。」

「大丈夫、ここにいるよ。」

「私やってない…。」

「分かってる。」

「猫音さん言ってた。」

「ん?」

「あなたは…家族じゃ…ないって。」

「そうか。」

「私…どこにも…必要とされない…。桐谷さんだって…あんなことに…!」

震える凛音の体を支えながら大丈夫ってとにかく言い続けた。こんな凛音を見るのは初めてだった。安定剤を入れて、少し眠らされた凛音の横から離れられない。

「ごめんな。俺のせいで黒軍に入ってこんなことに。」

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