第86話:来訪者

桐谷目線___

 10分くらいだろうか…気絶したりおんちゃんが目を覚ました。

「大丈夫…?」

「あ、発作が…。」

 発作…?

「睡眠発作です…ほっておいて大丈夫です…ごめんなさい…心配…かけて。」

「いや、大丈夫。」

 余計なこと聞いたかな…。

「私、覚えてない…です。ここまでのこと。」

「そうか。いや、もし覚えていたら聞こうと思っていただけだから…。」

 ピンポーン

 来客?

「はーい。」

 嫁の声が響く。この時間にだれが?

「あら!羅希ちゃん…!」

「羅希ちゃん…。」

「羅希先輩…。」

 大和の高等部に会わすのはまずいかもしれない。

「今、君の味方は誰か分からない。それは分かるね?だから、羅希ちゃんにも会わせられない。」

 頷くりおんちゃん。

「だから、少し隠れて貰えるか?」

「どこに…?」

「ここだ。」

 彼女の体を布団ごと持ち上げ、押し入れに寝かせる。

「ここでしばらく待っていてくれるか?」と布団をかける。

 そして何も無かったかのように

「羅希ちゃんどうした…?」と言う。

 横には百鬼君がいる。

「ちょっとお聞きしたいことがあって…。」

「奇遇だな、聞きたいことこっちにもあってな。ちょっと部屋を変えようか。」

 客間に通して2人にお茶を出す。

「まず、こっちの聞きたいことを聞いてもいいか?返答次第では君らの質問に答えられない。」

 顔が強ばる。なんで教え子を、亡き息子の彼女を疑わないといけないのだろうか。

「分かりました。」

「君らの目的は四月一日凛音を探しに来た。間違いないね?」

「それは…。」

「彼女は発砲事件を起こしたということで、中等部も含めて血眼になって探している。彼女は何をした?」

 押し黙る2人に

「こんな風に脅したくはないが、彼女の身は私の手の中にある。」

「っ!」

「…先生らしくないですね。」

 羅希ちゃん…。ごめんね。

「一条猫音って知っていますか?」

「あぁ、黒軍の名門一条家の跡取り娘だな。確か今は大和の司令部じゃないか?」

「彼女と凛音は従姉妹です。」

 一条家の血を継ぐのは1人しかいなかったはずじゃなかったか?

「私達も詳しくは知らないのですが、彼女と凛音がトラブって、発砲事件になったみたいです。」

「だから血眼になっていたのか。」

「凛音はトラブって発砲するような、血気盛んな女の子ではないです。」

 だろうな。

「凛音を見つけてどうするつもりだ?君らも中等部まで捜索依頼が来るような状態だぞ?」

「っ!」

 そこまで大事になってると思っていなかったか。

「今高等部の寮では、毒が混入される事件が起きています。蒼桜くんと私の弟も被害を受けて。とりあえずしばらくはどこかに身を隠して。」

 毒混入と発砲事件か。

「見つかるまで日本全国探し回られるぞ?高校生が日本全国の黒軍を敵にして生きていられるか?」

 沈黙が続く。

「とりあえず凛音の居場所は教えられない。そして君たちは学校に戻った方がいい。」

 不満な顔だな。だが

「君らは悪いことしていないのだろ?君らはこの家に来たこと以外正直に話す方がいい、これは生徒がどうにかするべき問題じゃない。」

 分かりましたと立ち上がり帰っていこうとする2人に

「学校まで送っていく。」と言い、車の鍵を持って行く。

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