第76話:血

羅希目線――

 寮生は登録していた外部との通信手段を没収された。また隔離が行われているから凛音と連絡が取れない。

 犯人は寮生と予想した学校側は調査をしていた。うちの班は班長が被害者だから早めに様々な調査をされた。一先ずは疑いなしの判定が出た。

「凛音、きっと寂しがってる…。」

「雨梨がそんなこと言うの珍しいじゃん!!早く会いたいよなー!」

「そうだね。班長のお見舞いさえ出来ないもんね。」

 班長の容態さえも全く知らされていない。ごほっと咳き込む奇龍。

「風邪?」

「そうかもな。俺頭いいから。」

「は?何言ってるの?」

 今本気で軽蔑した。心配した気持ちを返してほしい。

「奇龍は…頭はいい方ではないと…思う。」

「ひっでぇ!誰もフォローしてくれる人いないのにディスるなよ!凹むだろ!!」と立ち上がった奇龍がふらつき、口元に手をやった。

「大丈夫?」

 下を向いたまま固まっている奇龍の肩を抱く。するとふらっと体を預けてきた。

「え、奇龍?」

 弟の口元に当てた手は弟の口から出される血を受けきれなくなっている。そのままずるっと落ちる弟の体を掴む。さっきまでうるさすぎた弟の口は真っ赤に染まり、細い息の音が聞こえる。

「雨梨、先生呼んで!」

「分かった。」

「奇龍!奇龍!」

 目をほっそり開けた奇龍はとちった時の顔をした。

「大丈夫だから。奇龍!」

 ずんと重くなった体は口元から出る血でゆっくりと赤くなる。

「九万里!」

 先生たちが駆け寄り運ばれていく。追いかけようとした私の体を掴み

「九万里、お前は来るな。姉弟でも寮生は待機だ。」

 そう引き剥がされた。血だらけの服は資料として回収され、私達はそのまま調べられた。終わったのは26:00。人ならざるものが通る時間。血だらけだった私と雨梨が歩く。そのまま2人とも何も言えず、部屋の前に来る。

「先輩…あの…奇龍は強いから。」

「そうだね。なんだかんだ化け物並の体してるからね。じゃあおやすみ。」

「おやすみなさい。」

 雨梨の足音が遠のいていく。何も無かったかのような暗闇が部屋を包んでいた。

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