第16話

「お待たせしました、しんけんハンバーグとチキン南蛮とねぎトロ丼、大盛りフライドポテトになります」


 私たちが沈黙してカルピスPOPと見ていると横から店員さんが注文した品を持って来た。それぞれ注文した品を聞かれ、その品を手であちらこちらと指していく。


「ごゆっくりどうぞ」


 軽く頭を下げるとそのまま奥の方に下がって行った。私のトレーの何かにオーダー用紙が折りたたまれていた。


「私もジュース持って来る」


 楓にそう言って席を立った。ドリンクバーを頼んだのだから飲まないと損だ。


 楓は軽く頷くとカルピスPOPに口をつけた。




 ドリンクバーから戻って来ると楓はポテトを摘みながら私を待っていた。


「先食べててよかったのに」


 そう言いながら席に着くと楓は箸を持った。


「なんとなく待ちたかったから」


「そう」


 楓は箸を手で挟んだまま合掌した。私も合掌してから左手にホーク、右手にナイフを持った。そのままホークでハンバーグを抑えながら一口サイズに切り、ホークで刺して口に運んだ。


 そんな私を楓がジーっと見ていたので口に入ったハンバーグがなくなってから聞いた。


「どうかした?」


「・・・いや、美味しそうだなって」


「・・・少しいる?」


「うん」


 私はさっきと同様に一口サイズにハンバーグを切った。


「どこに置けばいい?」


「ここに入れて」


 そう言ってねぎトロ丼の蓋を差し出してきたのでその上に置いた。


「私のもいる?」


「いら・・・少しちょうだい」


 最初はいらないと言おうとしていたのだけど、楓のねぎトロ丼も見ていると美味しそうに見えて少し欲しくなった。


「ご飯の上に置けばいい?」


「ありがとう」


 楓は私があげたハンバーグより少し大きいぐらいのねぎトロをご飯の上に置いた。楓の皿には隕石が落ちたかの様な丸いクレーターができ、下にある白米が見えていた。



「暑い〜」


「やっぱり店の外って暑いね」


 長いお昼を終わらせて私たちは店を出た。それぞれが注文した品を食べ終え、最後に特大のかき氷を一つ追加注文した。私も楓もどのぐらいの大きさかわかっているのですぐに一人では食べられないと判断した。


 パフェやコーヒーゼリーなどが他にもあったのだけど、なんとなく今日はかき氷の気分だった。それは楓も一緒で結果的に半分ということになった。味はいちごマンゴーの練乳かけ。税込387円とお高いものの、それに似合った量が出て来る。家で作ればもっと安いのだろうけど。


「そろそろ遥華の家に行かないと時間がなくなる」


 楓がスマホを見ながらそう言った。私もカバンからスマホを取り出すと画面に目を向ける。


「もう三時なんだ」


 楓と待ち合わせしたのが一時、店に入ったのはそれから数分後なので二時間近くいたことになる。ジョイフルにこんなに長くいたのは初めてかもしれない。


「家に行こうか」


 今日の目的は楓が家に来たいと言ったから。それがメインなのだからここで時間を潰すのは今日会った意味がない。


 楓は笑顔で頷くと私の横を歩き始めた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る