林へ

 最初の林には、怪物の影もなく、レクイカらは安心した。

「よかった……」

「じゃあ、ここを抜ければもう国境までは……」

 ミートは、ミカーに注意されないよう、少し離れたところからレクイカに話しかける。

 レクイカは、え? 何? と聞き返すので、ミートはレクイカにもう少し寄ろうとするが、ミカーのジロリと視線を感じ取り、もう一度声を大きくして聞く。

「国境までは、もう林はないのか?」

 

「いえ。この先にもまだ、林の中を抜けなければならない箇所が二、三……」

「そうなのか。いなけりゃいいけどな、怪物」

「レクイカ様。私達はひとまず民の元へ戻るとして、ミートをこの先の林へ偵察に出させておきましょうか?」

「おいおい……」

「伝令だけじゃなく、偵察任務まで授かり、光栄と思わないのですか?」

「怪物が出たらどうする」

「短刀を渡しましたが?」

「自決用だろ」

「そういうことですが」

 

 二人の会話に、定番となった苦笑をして、レクイカはさあ戻りましょう、と促した。

 

 民らに長めの休憩を取らせると、レクイカは、こう説明する。

 

「皆さん。ここからは、街道が幾つかの林の中を通ります。林には、怪物がいることが多い。幸いに、先程見てまいりましたがこの先の林にはいませんでした。ですが、雨が近付けばいつ、現れるかわからない……林地帯を抜けるまでは、この休憩を最後の休憩だと思ってください」

 

 これを聞いて民達も皆意を決した表情になる。

 

 ここからは、街道のすぐ脇にまで木々が迫ってくるため横には広がれない。

 先立っての先遣同様に、レクイカ、ミカー、ミートに影騎士二名が先遣隊として先々の林を探り、少し離れてファルグを先頭、シトエをしんがりに民を間にして守るように行くこととなった。

 

  一行は、林へと歩み出した。

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