レクイカ、線の雨が降る前に

k_i

prologue

 【線の雨】。

 そう呼ばれる雨がある。いつ頃からだろう。線の雨が世界に降り始めたのは。誰かがそれを遠くから見た。それはまるで、いやまったく、その名の通り天から地まで線として降り注いでいる雨だった。その雨が行った後、雨が降ったところが、消えた。そこにあったのは、ただ、白い影。家だったものも、木だったものも、その町に住んでいた人も、皆消えた。おそらく、あまたの白い影のなかのどれかが、そこに住む人々の誰かだったのだとしても今は、その白い影はもともと家だったものか、木だったものか、それとも人だったものか、わかりはしない。

 

 それから暫くして、雨と一緒に、怪物が現れた。

 物憂い表情をたたえた、大きな黒い影の怪物。怪物は、雨が去った後に白い影を食べる。どこへともなく去っていき、また雨の降るところに現れるのだ。その後には、ただ白い平らな土地に、静かに雨が降るばかり。……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る