第四部 人間転生2

第44話 4度目の転生

物語の形式は、手記と神話の2つに分けることが出来るというのを何かで読んだことがある。

手記というのは個人の日記や旅行記、事件の記録などで、フィクションの場合もその形式をとったもののこと。マルコポーロの東方見聞録なんかは旅行記で、ガリバー旅行記は旅行記形式のフィクション。シャーロックホームズシリーズは小説だけど、ワトソン博士の書いた事件簿という形式をとっている。この形式の物語は誰かの視点による一人称が多いけれど、俯瞰した三人称で書くことも可能。

手記の形式では、誰かが実際に体験した事だというリアリティはあるのだけど、書き手が知ることができないことは書くことはできない。例えば誰かが死ぬ間際に言った言葉なら周囲の人が聞くことが可能だからそれを書けるけど、死ぬ間際に何を思っていたのかというのはわからないので書くことができない。


もう一つの神話形式だと、それこそ神の視点でどんなことでも書くことが出来る。世界のはじまりで神が光あれと言ったなんてことは、誰も見ていたわけではないので実際の手記や記録として書かれたなんてことはありえない。つまり何か超自然的なお告げみたいなので知らされたとか、全くの絵空事として頭で考えたこと。この神話形式ならば、どんなことでも書くことが出来る。


この物語は、僕が一時転生中に体験したことを地球に戻ってから記憶をもとにして書いている体験記なので、手記と神話のどちらかで言えば手記に分類される。手記だから本当の事だとは限らないけど、本当だったとしても矛盾が無いように書いているつもりだ。これが異世界に行って戻ってこない話だったら、それをどうやって地球で発表できるのかという疑問に答えることができない。

舞台が異世界でも未来でも宇宙でも、そこでの話が現在の地球で公開されるということは、誰かが戻ってくる必要がある。さもなければ手紙などの情報だけを何らかの方法で送ったとか。


前置きが長くなってしまったけれど、4回目の一時転生の話。今回は前回よりも人間に近い生き物がいる世界に行くことが出来た。僕の判断した限りでは地球人との違いを見つけることができないくらいに人間そっくり。

でも世界は少し違っていて、ファンタジーに登場するような獣人というのか猿以外の動物から進化した知的生命が存在していた。


転生先の選択は前回と同様に手足が2本とかの条件以外に、目や鼻や口の位置関係も追加してより人間に近い相手が見つかるようにした。


条件でサーチすると一致した相手が見つかった。相手は僕と同じくらいの成人男性のようだった。一時転生を持ちかけると簡単にOKしてくれた。条件としては自由が欲しいということで、これが具体的にどういうことなのかは何度か質問してもわからなかったのだけど、出来る限りやってみるというので了解してくれた。

転生期間の一週間というのも前回のことがあるので、7日で説明した。昼と夜で1日で、それが7回というイメージで伝えた。7という数も最初はうまく伝わらなくて、指を折って数えていく映像を思い浮かべることで何とか伝わったみたいだ。


今回も転生は寝てる間の自動転生を設定した。目覚めている状態での転生も何度かやったけど、時間がわりとかかるのだ。例えて言えばパソコンでデータをダウンロードしてるかのような待ち時間があり、そこから実際の転生が行われるのだけど、このときには一時的に意識を失う。

なので最初のうちは転生時の体験として経験してみたけど、なれてきたら寝てる間にやったほうが楽だなと思うようになった。

それに今度目が覚めたら別の世界で別の身体なのだと思いながら眠るのは、なんだかわくわくする気分でもある。



しかし、4度目の転生はそんなに良いものではなかった。こうして体験を書くことが出来ているのだから、向こうで死んだりはしなかったのでそのあたりは安心して読んでもらってもいい。でも、結構大変だったのだよ。


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