第25話 プールと着替え

転生二日目の学校では、プールの授業があった。

大球人は地球人と同じく肺呼吸なので、泳げなければおぼれてしまう。なので子供の頃に泳ぎの練習をするという。着替える前の教室で、レイレ先生がそう説明してくれた。もちろん地球人うんぬんというのは無かったが。


授業は隣のクラスと合同で行われるが、着替えはそれぞれの教室でする。真ん中をカーテンのようなもので仕切って男女に分かれる。僕がいた場所は男子側だったようで移動しなくてもよかったが、隣の席のタニタは無言で軽く手をあげて女子のエリアに歩いていった。僕も何となく手を上げて軽く振った。タニタの歩いていく先にライラがいたので気持ちそっちに向けても手をふってみたが反応はなかった。むしろ目をそらされた気がする。


「のぞかないでよ。」みたいなことを言って、名前を忘れてしまったクラスの女子が仕切りをしめていった。忘れたというのはこれを書いている今の話で、この時点ではカンカの頭脳を使ってるので知っていた。


「ちょっとまだ途中だから脱がないでよ。」


と女子。これは待ちきれないドンドなど一部の男子が着替え始めてしまったことを受けてのものだ。さらに文句を言いつつも、急いで仕切りをしめていた。


「いいじゃん別に。見られたってこっちは気にしないんだから。」


これはドンドのセリフ。いやまあそれはそうだけど、それだと露出狂もセーフということになってしまう。そういえばこっちの世界にも露出狂はいるのかな。

男女間はともかく、男子間では羞恥心もないようで、ほとんどがタオルで隠したりもしないで服を脱ぎ、水着に着替えている。

僕もズボンやパンツを脱いで水泳用パンツをはく。短パンみたいに腿まである形状だ。あとはシャツも脱いで準備完了。


「なあカンカ。上は着ないのか?」


そう言うダンダはまだシャツを着たまま、いやこれは水着か。ちょっと前に景気良くスッポンポンになってたから、水着としてのシャツを新たに着たんだろう。あ、そういうことか。


「これから着るよ。」


この世界では男も水着の上を着るというのをカンカの記憶から思い出した僕は、そう言い訳しながらカバンから残りの水着を取り出した。地球人の先入観で水着はパンツだけだと思い込んでしまっていた。帽子とゴーグルも忘れてた。あとはダンダの腕につけてるロッカーの鍵みたいなのは、これか。カバンにはそのロッカーの鍵みたいな楕円の板にゴムバンドが付いた物もはいってた。これは個人認証に使われる物のようだ。つけるのは左右どっちの腕でもいいみたいなので、地球人としての習慣で左腕につけるが、


「それ逆じゃないか?」


とダンダに言われてしまった。


「えっ、右でも左でもいいんじゃないの?」


「いや右側とか左側は関係ないよ。進む方向で変わるし。鼻手だよ鼻。」


「ああ、そうだっけ。うっかりしてた。」


そうごまかして、認証バンドを左手から右手に移す。

今の僕の認識としては、ひざがある方を前として地球人式に右手と左手としてるのだけど、大球人には右手とか左手とかは無い。前後が逆になれば右と左は入れ替わるからだ。

だからどっちの手というのも特にないかと思っていたのだけど、このプール用バンドは付ける腕が決まってるみたいだ。鼻手というのは鼻がある方の手ということだろうけど、カンカの記憶にそんなのあったかなあ。

鼻手の反対側は口手だろうか?

そう疑問に思ったら、口手は食事をする時に使う手のことだというのが記憶から浮かび上がってきた。こっちは知ってたらしい。


ドンドと一緒にプールまで移動する。同じようにプールに向かう同じクラスや隣のクラスの男子もいる。女子がいないのは着替えに時間がかかってるのだろうか。




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登場生物まとめ


カンカ:僕の一時転生を受け入れてくれた男の子。

ライラ:カンカの幼馴染。眼鏡っ子。

タニタ:カンカの左隣に座ってる女子。無口。

ドンド:カンカの右隣の男子。運動が得意。

レイレ:カンカのクラスの教師。

バンバ:隣のクラスの教師。次回登場予定。


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