生きながらに…、が怖かった~疑惑 by芥川龍之介
YouTubeチャンネル「
さてあらすじです。倫理の講演のために地方に滞在中の主人公のもとに一人の男が訪ねてきます。その男はその地方で教師をしており、先の大地震で妻と家をなくしており、その時の話を聴いてもらいたいのだと言います。彼の妻は震災時に崩れて火の手の上がった家の下敷きになり、生きながらに焼かれるくらいならいっそ、と彼は妻を撲殺します。妻を殺した事実に彼は苦しみ、主人公に心の内を吐露したのでした。
昔の持って回ったような口調がなんとも上品で、聞き手である主人公が地方の名士に用意してもらった部屋の記述等も、その細かい注文の下りからすでに美しく、小学生並みのボキャブラリーで「芥川、文章うまいわー」といわざるを得ません。
男はのちに、妻と同じ状況下でも柱が焼け落ちて脱出できた人の話を読んで、ショックを受けます。そして月日が経つにつれ、自分は本当は、軽度の障害があった妻に不満があったから殺したのではないかと自分を疑い始めるのです。衝撃的な話です。自分自身の気持ちの善悪を後になって考えて苦しむ。平気で人を殺す人間もいるというのに、なんとも真面目で、ある意味損な気質とも言えますが、その様子に一種の清廉さというか美しさを感じました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます