第49話 無双
ヨミの中に居る刀和はその強さに驚愕した。
(凄い……)
いきなり、大剣を投げつけるや否や、鮭のような頭の晶霊の股間に当たり、その剣を掴んで斬り上げただけで両断され、そのまま流れるようにもう一人の蟹のような晶霊を斬った。
さらに瞬を囲んでいた男たちを切り刻んでしまい、瞬がアカシの中に入るところまで見ていた。
(早すぎる……)
まるで重さを感じていないかのように大剣を振り回すだけではなく、素人の刀和から見ても明らかにアカシたちの数倍は速く動いている。
(これが当代最強の剣士ヨミか……)
まるで敵が居ないかのように悠々と歩くヨミ。
すると、急に大剣を横に掲げて盾のように構えた。
カンカンカンカン!
大剣に何かが当たるような音が聞こえる。
ふっ
すぐにヨミが敵の真っただ中に踏み込んだ!
そしてすぐに大剣を上へ構える!
その時、刀和は見た!
(嘘だろ! たった一歩だぞ! )
たった一歩踏み込んだだけでかなり遠巻きに囲んでいた敵が目の前に現れる!
敵は完全に凍り付いており、呆然とした表情まで読み取れた。
彼らは弓矢を手にしており、ちょうど矢をつがえようとしていた所だった。
(さっきのカンカンは矢が当たった音か! )
ザシュッ!
刀和がそれに気づくと同時に目の前の敵が一薙ぎで3人まとめて斬られる!
そのまま流れるように敵陣の真っただ中を高速で走り回りながら斬りまくる!
シュパパパパパ!!!
敵は悲鳴すら上げる間もなくどんどんと斬られていく!
そして、10人ほど斬ったら急に視界から敵から遠くなり、ある程度間合いを取った後で止まる。
そして止まると同時に、先ほどヨミが居た所に矢が刺さった。
(あんまり調子に乗るとすぐにああいった飛び道具にやられるからなぁ……)
(意外に慎重なんですね)
大胆な行動には似合わない慎重さだった。
(爺は体力が無いからな。効率よく動かんと)
(普通の老人はそんなに早く動けないですよ)
辛そうな…………と言っても明らかに演技だが…………ヨミの声を聴いて、刀和は呆れて言った。
一方でトヨタマはアカシの介抱をしていた。
『アカシ! しっかり! 』
『まだ……大丈夫よ……』
何とか立ち上がるアカシ。
すると、近くまで来ていたヨミが声を掛ける。
『あまり無理せず逃げろよ。俺がしんがりをやるからさっさと逃げろ』
『は、はい! 』
状況が飲み込めていないが黄衣の剣士ヨミが助けてくれたことだけはわかる二人。
『黄衣の剣士ヨミ! 助太刀感謝します! 』
『なぁに気にするな。相棒の仲間は助けて当然よぉ! 』
そう言って豪快に笑うヨミ。
それを聞いて変に感じるトヨタマとオト。
(( 相棒? ))
二人が知る限りヨミには相棒は居なかったはずだ。
だから、不思議に感じたのだが、そんなことを聞いている時間は無いと考えて、すぐに包囲網の突破をしようと敵陣に突っ込む準備をしたその時だった。
『逃げる前にお相手願うぜ……』
そう言って白い体に黒い斑点が付いた晶霊が現れた!
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