3-4 アーチライト・コルア・ウィットランド

 アーチライト・コルア・ウィットランド。

 その名を持つ魔術師について、アルバトロスは誰よりも良く知っていた。

 死者転生術とは死者の肉体を依代とし、死者をこの世に転生させる魔術。そして、アルバトロス・フォン・ヴィッテンベルクの転生に際しては、現代の知識を継承する手段として、その依代の記憶をほとんどそのままアルバトロスへと引き継いでいた。

 だから、アルバトロスは自らの転生の依代、アーチライト・コルア・ウィットランドの記憶の中の事であれば、誰よりも良く知っている。

 当然、ヨーラッド・ヌークスについても、その例外ではなかった。

 曰く、大陸最悪の魔術師。

 曰く、架空元素『雷』を操り、自らもそれに変成する等級十五の魔術師。

 そんなヨーラッドの悪逆を止めるために大陸から魔術師を集めたヨーラッド討伐遠征に参加した事までが、アルバトロスの知るアーチライトの生涯で。

 ただ、それでも、アルバトロスにはわからない事があった。

 アルバトロスは、アーチライトの死因を知らない。

 ヨーラッド討伐遠征、その最終的な顛末を知らない。

 依代の記憶と自らが見聞きした情報を擦り合わせる事である程度の推測はできるが、それはあくまで推測であり絶対ではない。

 絶対があるとすれば、それはアーチライトがすでに絶命した事。

 そして、今のアルバトロスにはヨーラッド・ヌークスに対する勝算などないという事だけだった。

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