第2話:チャラい系騎士と図書室
「…ふぅ。やっと着いた…。」
がチャリと図書室の部屋を開け、資料を保管している棚を探す。
やっと着いた…と言っているが、もっと早く辿り着けたのにわざわざ遠回りして道草までくっていたのはアロンダイトである。
ちなみにさっきの窓辺でのユージーンとの一件は、彼の「…そうか、お前は資料の返却より俺からの説教が聞きたいんだな。」という発言により幕を閉じた。
あの時のユージーンの目は笑ってなかった。
「図書室に着いたは良いけど…どの棚に返しゃ良いんだ?」
アロンダイトはたくさんある棚をキョロキョロと見回す。
王城の図書室は大きく、たくさんの書物や資料が保管されている。中には貴重な書物や資料も有り、それらは奥にある鍵付きの金庫のようなものに保管され厳重に管理されている。
アロンダイトが任せられたのはそんな仰々しいものではなく、王城に出入りしている者なら誰でも閲覧可能なものだ。
ユージーンもそんな貴重なものをちゃらんぽらんなアロンダイトに任せるような無責任なことはしない。
案内のプレートを発見したので見てみると、左手の方にある棚のいくつかが資料を保管している棚のようだ。
アロンダイトは目的の資料保管コーナーへと向かったのだが…。
当たり前と言えば当たり前なのだが、棚に並ぶ大量の資料たちはキチンとジャンル事に綺麗に整理されている。
普段から図書室を利用し、この棚から資料の出し入れを出し入れしている者にはどの資料をどこに仕舞うかすぐに判別出来るのだろうが、あいにくとアロンダイトは普段から利用するどころか図書室入るのも今日が初めてである。
なので当然、アロンダイトは預かった資料をどこに仕舞っていいのかサッパリだ。とりあえず資料の棚を適当に見てみるが、なんの資料なのかさえよくわからなかった。
「…くそっ。モタモタしてたらまたジーンに何言われるか…。ってか、どの棚に返すか教えとけよな…。」
今日のアロンダイトは1人でブツブツ愚痴ってばかりである。
一通り資料の棚を見終えたが、手元に抱えている資料の束はひとつも減っていない。
(もう適当に置いて行ってやろうか…。)
そんなことをアロンダイトが考えた時、不意にゴソゴソと何か音がした。
アロンダイトが図書室に入った時には誰もいなかったと思ったのだが…。
しかしアロンダイトが図書室に来てから今まで、扉が開閉する音はしなかった。
ということはアロンダイトが図書室に入ってきた時点で何者かが潜んでいたことになる。
(盗人か…!?)
アロンダイトに緊張が走る。いつでも剣が抜けるように鞘に手をかけ、音の方へ向かおうとした瞬間ー…。
「…あ…あのっ…ななな何か、お困り…です…か…?」
音がした方向の本棚の影から、真っ白な肌の髪の長い女がぬっと現れた。顔を覆うような長い前髪のせいで表情はわからない。
その佇まいはまるで貞●や呪●といった映画に出てくる幽霊のようだった。
「で、出たぁ〜…!!」
驚いた拍子に持っていた資料をばら撒きながら、アロンダイトは後ずさった。
幽霊に剣は有効なのだろうか?そんなことを考えながら、アロンダイトは身構える。
しかし、幽霊(?)は特に何もしてくる様子はない。それどころか、自分を怖がっているアロンダイトにオロオロしているようだ。
だんだん落ち着いてきたアロンダイトはしっかりと女を見てみる。
足はー…ある。
着ている服は暗めの色ではあるが、いかにも高級そうなワンピース。
そしてこの国では珍しい黒髪…。
「…まさか…王女殿下…!?」
アロンダイトの言葉に女がピクリと反応を示した。そしてしばらく悩むような仕草をしたのち、女はアロンダイトのそばまで歩みでる。
「……あ…っ…アルッ…アルストロッ…メ…メリア王国…、第一王女の…ティターニアで…ご、ござい…ま…す。」
オドオドと噛みまくりながら自己紹介をしたティターニア。そしてそんなティターニアに礼をとることも忘れてアロンダイトは固まっている。
王女を幽霊と間違えるなど、とんでもない不敬である。アロンダイトは自分の失態に青ざめた。
「あ、あの…?だ…大丈夫…ですか…?」
オロオロと不安げに尋ねるティターニアの様子に、彼女はどうやら怒っていないらしいと悟って安心したアロンダイトは慌てて王女に対して最大限の礼をとったのだったー…。
こうして、2人の出会いはロマンもトキメキも胸キュンもない、なんとも言えないものとなってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます