第34話
*
「ありがとうございましたぁー!」
結局、愛実ちゃんはスカートとセーターを買い店を後にした。
せっかくだから代金は俺がだそうと思ったのだが、愛実ちゃんから強く拒否されてしまった。
「もう……次郎さん、人前でああ言うことを言うのは控えてください!」
「なんだよ、あぁ言うことって?」
「自覚してないのが厄介なんですよね……」
「は? 何がだよ?」
「何でも無いです! まぁ……嬉しかったけど……」
「ん? それより、そろそろ予約した時間だ。 早く店に行かないとな」
「それもそうですね」
俺たちはショッピングモールを後にし、ケーキバイキングの店に向かう。
昼飯の代わりがケーキなんてな……。
まぁ、偶には良いか。
「おぉ~ケーキがいっぱいですよ!!」
「そりゃあ、ケーキ屋だしな」
店に着いた俺たちは席について、店員さんからバイキングの説明を受け、早速俺たちはケーキを取ってきた。
飲み物も飲み放題らしく、俺はホットコーヒーと無難にショートケーキを持って席に戻ってきた。
「あれ、次郎さんなんか少なくないですか?」
「まぁ、俺はちょっとづつ行こうかなって」
「えぇ~時間制限有るんですよ! 食べれるだけ食べましょうよ!」
「いや、俺は愛実ちゃんが食えなくなった分を食うことになりそうだから」
「えぇ~大丈夫ですよ~」
「本当かよ」
俺の目の前に座る愛実ちゃんのトレーの上には、ミニケーキが三個と普通のケーキが四個載っている。
良くそれだけ食おうと思ったものだ……。
「う~ん、美味しいですぅ~」
「そりゃ良かった」
「はい! 幸せです!」
「まぁ、確実に太るだろうがな……」
「何言ってるんですか、甘い物は別腹ですよ~だから太らないんですぅ~」
「なんだその無茶苦茶な理論……まぁ、太っても自分の責任だろうから、俺は何も言わないけど」
「太りませんもん! 女子高生はいくら食べても太らないんですもん!」
「だから、どんな理論だよ……」
無茶苦茶な理論を話す愛実ちゃん。
まぁ、本人がそれで幸せなら何も問題はないのだが……。
しかし、ケーキだけって言うのはキツいな……味が違うと言っても、やっぱりケーキはケーキだ。
二・三個食べると飽きてくる。
俺はケーキを三個食べたところで、飲み物しか飲まなくなっていた。
甘い物ばっかりで口が飽きしてしまった。
「あれ次郎さん、もういいんですか?」
「あぁ、もう腹もキツいし……」
「次郎さん小食ですねぇ~、大丈夫です! 代わりに私が元を取りますから!」
「無理はしないでね」
俺がケーキを食べるのをやめてからも、愛実ちゃんはパクパクとケーキを口の中に入れていった。
こんなに良い食べっぷりなら、連れてきたこちらもなんだか嬉しくなる。
「フフ……」
「ん? なんで笑ってるんですか?」
「いや……よく食べるなと思って」
「な、なんですか! 別に良いじゃ無いですか!」
「あぁ、連れてきて良かったよ」
「あう……」
俺が愛実ちゃんを見ながらそう言うと、愛実ちゃんは恥ずかしそうに顔を赤くして俯いてしまった。
「次郎さんは……その……私とのデート……楽しいですか?」
「え?」
突然愛実ちゃんがそんな事を聞いてきた。
楽しいかどうかか……。
「そうだなぁ……映画は苦手なホラー映画だし……買い物は散々服を選ぶのに付き合わされたし……昼飯がケーキだもんなぁ……」
「うっ……た、楽しくないですか?」
「………なんでだろうなぁ……不思議なもんで……愛実ちゃんと一緒だと楽しいんだよ」
「え………」
「なんでだろうな?」
俺は愛実ちゃんに笑顔でそう言うと、愛実ちゃんはぱあっと表情を明るくして、再びケーキを食べ始めた。
「もう次郎さんったら! どんだけ私の事好きなんですか! もう! もう!」
「牛か、良いから食えよ、まだ時間あるぞ」
「はい!」
結局愛実ちゃんは時間ギリギリまでケーキを食べていた。
最終的に何個食べたか本人も覚えていなかったが、確実に元は取ったと思う。
「はぁ……お腹いっぱいですぅ~」
「それはよかったよ」
店を出た俺たちは食後の運動を兼ねて、歩いて駅前に向かっていた。
さて、これからどうしたものだろうか?
この後の計画をあまり考えて居なかったな……。
時間はまだ15時、解散にはまだ早いし……。
「この後どうする?」
「うーん……じゃあ次郎さんの部屋に行きたいです……」
「え? 折角駅前に来たのに?」
「いやぁ……あとはなんか家でゆっくりしたいなぁ~って……」
「ケーキ食って眠くなったの?」
「それもあります」
「食って寝ると牛になるぞ」
「大きなお世話です!」
「まぁ、良いけど……それで良いのか? 折角のデートだろ?」
「はい! ……それに、後やることは一つだけじゃないですか……」
「ん? 何か言ったか?」
「何でもないです!」
愛実ちゃんの要望により、俺たちは俺の部屋に向かい始めた。
俺の家に行ったら、いつもと変わらなくなるんじゃないだろうか?
家に到着すると、愛実ちゃんは真っ直ぐに俺のベッドにダイブした。
「はぁ~疲れたぁ~」
「おい、そこ俺のベッドなんだが?」
「ん~? 一緒に寝ます?」
「はぁ……寝ないよ。お茶とジュースどっちが良い?」
「じゃあお茶で~」
「あいよ」
俺は荷物を下ろして、冷蔵庫からお茶を取り出しグラスに注ぐ。
デートの最後がこんな感じで果たしていいのだろうか?
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